株式会社いつつ

連載:全国将棋道場巡り 2017年12月28日

将棋のまち天童に毎日気軽に将棋が指せる場所を〜天童将棋交流室

中倉 彰子

女流棋士中倉彰子(以下彰子)が全国の将棋教室・道場を訪問する「全国道場巡り」。今回は将棋のまち山形県天童市にある天童将棋交流室 ・天童市将棋資料館にやってきました。

取材に応じて頂いたのは、公認将棋棋道師範として天童少年少女将棋教室の土曜教室・水曜教室の子どもたちの指導をしている大泉義美さん(以下大泉さん)と、日本将棋連盟天童市部支部長の村岡良雄さん(以下村岡さん)です。

将棋のまち天童の天童将棋交流室 ・天童市将棋資料館にやってきました。
将棋のまち天童の天童将棋交流室 ・天童市将棋資料館にやってきました。

毎日気軽に将棋が指せる場所を目指して

天童に毎日気楽に将棋が指せる場所がほしいと長年願ってきたと話す村岡さん
天童に毎日気楽に将棋が指せる場所がほしいと長年願ってきたと話す村岡さん

彰子:「さすがは将棋のまち、天童。プロ棋士の方のサイン色紙がいっぱいありますね。よくこちらに寄られるんですか?」

村岡さん:「はい。天童市では人が甲冑を着て将棋の駒になりきる人間将棋が有名で、棋士の先生方もよく参加されているのですが、その際にこちらに寄っていただくことが多いですね。ちなみに資料館や保管室には、新聞記事や大会の結果や棋譜など、将棋に関する資料がたくさん保管されているのですが、その中に人間将棋の写真もあって、中倉さんの写真もありますよ、笑」

彰子:「お恥ずかしいです・・・(^_^;)確か私の翌年に妹も参加させていただいたんですよね。そういえば、こちらでは毎日将棋が指せるとうかがっています。」

村岡さん:「そうなんです。私を含めた数名が毎日交代制で運営を行っています。この建物自体は平成18年にコンビニ跡地に建てたものなんですが、ここが将棋のまち天童ということで、毎日気軽に将棋を指せるような場所がほしいともう何年も行政にお願いしてきました。私が天童支部の支部長になってから10年、長年の念願が叶い、こうして今やっていけているのは、支部の皆さんをはじめ皆さんが支えてくれているお陰です。」

将棋を指す子どもたちが急増!?

昨今特に子どもの会員登録が目立つと話す大泉さん
昨今特に子どもの会員登録が目立つと話す大泉さん

彰子:「椅子に座りながら指せるスペースと、畳の上で脚付将棋盤を使って指せるスペースがあって、将棋を指す場所としてとても充実しているような気がします。毎日どれくらいの方が来られるんですか?」

村岡さん:「今の会員数は全体で241名。そのうち127人が子どもです。」

彰子:「子どもの人数が多いですね。」

村岡さん:「特に最近は大人の方の新規登録はほとんどなくお子さんばかりですね。」

彰子:「藤井四段の活躍の影響でしょうか。」

村岡さん:「それももちろんありますが、最初に子どもの人数が増え始めたのは、昨年、中学全国大会で初めて山形出身のお子さんが優勝したことがきっかけです。彼は今奨励会でがんばっているのですが、ゆくゆくは藤井四段のような存在になってくれればと思います。その他にも、3月のライオン聖の青春の時もお子さんの登録が増えました。」

大泉さん:「平日はそれほどでもないですが、特に将棋教室のある土曜日には100人以上のお子さん、そして保護者の方の出入りがありとても賑わっています。」

彰子:「すごいですね。将棋教室は毎週土曜日に行っているのですか。」

大泉さん:「将棋教室といっても初心者向けや女性向けなどいろんな講座があるのですが、子どもの将棋教室については土曜日と水曜日の週に2回行っています。ちなみに水曜日には、私以外にも、仙台から来て講師を務めてくれるプロの熊坂学先生が、16時半からの開始にかかわらず、子どもたちが15時くらいにやってくるので、それに合わせて早めに来て子どもたちの相手をしてくれているのでとてもありがたいです。」

会員のデータをしっかり管理

出席簿、対局表などをしっかり保管
出席簿、対局表などをしっかり保管

彰子:「さすがは将棋のまちの子どもたち。少しでも早く将棋がしたくて仕方ないんですね、笑。 子どもさんの人数が多いと管理が大変だったりしませんか。」

大泉さん:「お子さんにかかわらず、天童将棋交流室では、全ての会員の方の情報をしっかり管理しています。例えば、どこから来てくれているのか、いつ参加してくれているのか、他にも対局表や大会の棋譜なんかも保管しています。ただ、先ほども申し上げたように、昨今会員の人数が急激に増えたこともあって、これらの業務が追いついていない部分もあります。タイムカード制を導入するなど何か施策を考えなくては思っているところです。それでも、人が多くて大変というのは嬉しい悲鳴であって、私たちの活動を通して、よりたくさんの人が将棋を楽しんでくれていることに、とてもやりがいを感じています。」

彰子:「図書館並みに数が充実している将棋書籍、教室の壁に貼られた詰将棋の問題やリーグ戦のトーナメント表、まるで道場のような席次など、ここにいるといかに子どもたちの日常に将棋という文化がいかに溶け込んでいるのかということが実感できます。」

編集後記

歴史ある日本将棋連盟天童支部
歴史ある日本将棋連盟天童支部

大泉さんとは、お仕事で天童に伺ったときにお会いしたことは何度かありましたが、ゆっくりとお話を伺ったことは今回初めてでした。本当に熱心に子どもたちへの将棋普及活動を、支部の方々と協力しあい、行政や市と連携をとりながら進めている姿に感銘を受けました。

驚いたのは、子どもたちの成績や支部の様々な記録・写真を綺麗に整理して保管しているところです。50周年記念の冊子を拝見しましたが、現在70周年の冊子に向けて「今から準備しておかないと。」と準備をされているところです。さすが先を読むのは得意ですね!

また子どもたちの対戦リーグ表なども手作りで作成されていたり、私の通った府中道場のように、壁に名前の入った木の札がかかっていたり、こういうのがあると「がんばって勝ち進みたいな」「はやく段のところにいきたない〜。」などと思いながら、子どもたちのやる気もでますよね(^^)

また天童交流教室にてお話をきかせていただいたあとは、天童市資料館も案内していただきました。大泉さんは、「天童市観光物産協会」の観光ボランティアガイドもされているとのことでした。

館内では、人間将棋で様々な棋士が甲冑をつけた写真や色紙なども展示されていました。もう何十年も前になりますが、私も平成◯年に、じつは人間将棋に出演させていただいこともあり、当時の写真と色紙も館内に飾ってくれていました。(はずかしいー。)

このときに、じつは中座も出演していたのですが、まったく記憶になかったです・・(苦笑)。

それはさておき・・将棋のまち、「天童」で、礼儀作法を第一に掲げながら、郷土愛にみちた将棋普及の活動をされている村岡さんや大泉さんたちの活動を知ることができました。

この度はありがとうございました。

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この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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