連載:東京新聞「子育て日記」 2016年5月9日
いつもと違う夜 -プロ女流棋士中倉彰子 子育てブログ
新年を迎えてから、初めてのエッセイになります。読者のみなさん、今年もどうぞ宜しくお願い致します。
さて、将棋界の年始めは、「指し初め式」という儀式から始まります。LPSAでは、1月の4日に、当協会の事務所にて行われました。当日は、将棋ファンやスポンサー、マスコミ、女流棋士等、多くの人が集まりました。
指し初め式とは、出席者全員が、一つの将棋盤を囲み、みんなで将棋を指すというもの。順番に一人ずつ盤の前に座り、一手だけ指して、次の人にバトンタッチして指し継いで行きます。初心者の方が盤の前に座ると、横から「この手がありますよ。」とアドバイスすることもあります。全員が一手ずつ指し終えると、指し初め式は終了です。
では、勝敗はどうなるのでしょう…?実は、決着はつけません。新年ですからね(笑)。日頃は盤を挟むと真剣勝負ですが、この日ばかりは終始和やか。式が終わった後は、新年会。そちらの方を楽しみにしている方も多いようです。
先日、長女のマイが、「明日、バアバの家に泊まる!」と言い出した。すると、最近、お姉ちゃんの真似ばかりしている次女がすぐに反応し「マキも泊まる!」。
バアバとは、近所に住む伯母のことで、伯父と共に子供達の事をよく可愛がってくれる。マイはもう何度か泊まっているが、マキは以前に一度挑戦するも、途中で「ママ~」と泣いて帰ってきた経験がある。
ママ「本当に大丈夫?」
マキ「泣かないもん!」
マイ「私がマキの面倒みる!」姉妹で固い絆(笑)。
伯母と相談し、再チャレンジさせることに。夜8時頃、伯母からメール「お風呂終わってTVみてる。歯磨きをどのタイミングでするか考え中」。
今度は大丈夫かも。一方、こちらは、主人が対局で家におらず、シン(1歳)と私の二人っきり。普段の夜なら「パジャマ着て!」「歯を磨いてー!」とバタバタ慌ただしいが、あれ?なんだか今日はすごく静か。
いつもは、ママが構ってくれないからと「うー!」と大きな声で訴えるシンも、今日は呼びかけなくてもママがこっちを見ているので、不思議な顔をしている。娘達の存在の大きさを改めて知る。毎日、子育てに追われていると、「自分の時間が全くない!」と焦る事もよくあるが、子供の世話を焼きながらバタバタと過ごすのも、本当は楽しい時間なのかもしれない、と思ったりもした。
次の日二人は、ちょっと誇らしげに「お泊り楽しかったよ~。」と帰ってきた。これから二人は、どんどん成長して、どんどん親離れをしていくんだろうな。ちょっと寂しい気持ちになった。
※子供語録**
・パパの誕生日に何をプレゼントするか相談する姉妹。
マイ「パパに、マッサージのチケット作る。」
おー、さすがは6歳のお姉ちゃん。
マキ「マキはアンパンマンの電話にする!」
それは自分が欲しいものでしょ・・。
・秋田のなまはげのイラストを見る。「悪い子はいないか~。」って探しにくるんだよと説明。
マキ「シンちゃん、この鬼は『悪いことしようよ~。』ってくるんだよ。」
違う違う。誘ってどうする!
・マキ「おうちに帰ったら、はなたれこぞう聴くく!」
ママ「もしかして『北風小僧のかんたろう』の歌のこと?」
マキ「そうそれ!」
ずいぶん寒そうな小僧さんね。
*
この記事は、東京新聞にて中倉彰子が連載している「子育て日記」と同じ内容のものを掲載しております。
:『東京新聞』2012年1月20日 朝刊
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