株式会社いつつ

将棋を学ぶ 2016年5月5日

子どもが将棋に強くなるのに必要なたった1つのこと

中倉 彰子

今日は5月5日、いつつの日、ではなく、こどもの日ですね。これをお読みの皆さまも、きっとお子さんと楽しい日を過ごされたことと思います。

さて、実は以前のメルマガでもご紹介したのですが、女流棋士になってから最もよく聞かれる質問のひとつに「どうやったら将棋が強くなりますか?」というものがあります。そして、「私も知りたいです」と答えていました(笑)。それでは、元も子もないので…。基本的なルールを覚えた(10級くらいの)5歳くらいの子を想定して考えてみたいと思います。

実は、基本的なルールを覚えたばかりのお子さんは、将棋を知っている(興味を持っている)けれども、好きだという状態にはまだなっていないことがほとんどです。そして、将棋に強くなるために絶対的な条件として、「将棋を好きになる」ことが必要です。(なお、必要ですけれども、十分ではないのが将棋の奥深い点かもしれませんね。)

いったん将棋を好きになりさえすれば、あとはお子さんならではのスポンジのような吸収力で、みるみる強くなっていくでしょうし、そして「強くなる」ための書籍や講座、イベントは本当にたくさん存在しています。ここまでくれば多少負けてもへっちゃらです。でも、強くなる前の段階である「将棋を好きになる」で将棋から離れてしまうお子さんが実は多いのではと感じています。

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そして、一部のお子さんを除くと、将棋に興味を持つ→将棋を好きになる、までの過程においては親御さんのサポートがとても重要です。というわけで、今回の「いつつの」シリーズは、「子どもが将棋に強くなるのに必要なたった1つのこと」から派生して、「将棋を好きになってもらうために親が心がけるべき5つのこと」についてお話したいと思います。

1. 親が将棋に付き合ってあげる

子育てに忙しいと、どうしても子どもの遊びに対して親がじっくりと付き合ってあげることは難しいですよね。でも、最初は親御さんに、ぜひお子さんといっしょに将棋を指してみていただきたいのです。親御さんは、ルールが曖昧でも構いませんし、動かし方を見ながらの対応でもまったく問題ありません。

これは将棋を好きになってもらうために、とても大切なステップだと考えています。子どもは、親といっしょに遊んでいるというだけで、その時間がとても楽しくなるものです。いっしょにテレビを見る、いっしょにおままごとをする、いっしょにボール遊びをする、なんでもそうなのですが、その行為そのものが楽しいというよりは、パパママといっしょに何かをしていることに、楽しさを覚えます。

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パパママと将棋をいっしょに指す時間が楽しい。そうお子さんに感じてもらうことが、将棋そのものを好きになってもらうためにはとても大切です。時間がなく、家事育児仕事に追われている日々いうのは本当によくわかります。ほんの少しの時間でもいいのでぜひお子さんといっしょに将棋の時間をもってみてください。きっとそれだけで、お子さんは将棋の時間が楽しくなると思います。

2. とにかく負けてあげる

勝つ喜びを体験することで将棋を好きになる
勝つ喜びを体験することで将棋を好きになる

そしてそんな将棋の時間。相手してあげる大人はしっかりと負けてあげましょう。とにかく負けてあげましょう。子どもは勝つことで楽しさを実感します。言うは易く行うは難し、で「負けてあげる」ことはとても難しいことでもあります。将棋を指すことができる親御さん(特に有段者のお父さま^^)にとって、負けてあげることは我慢が必要だと思うのですが、そこは「息子にはまだまだ負けられない」などと思わずにいてくてださい。(お子さんが将棋が好きになったら存分に「父の強さ」を発揮してくださいね。)

負けるのが難しい皆さんのために、いくつかの負けるコツを伝授しましょう(笑)。

  • 大駒(飛車角)の成を防がない
  • 取られそうな駒を安易に逃げない
  • 「うわー、困ったな〜」とヒントを匂わせながら指す
  • 「もっといい手があるかもよー」と「待った」を上手に使わせる
  • 王様は自陣の外に出ない(これは棋友館の小田切館長から習いました!)

いつつ流負け方のコツ、ぜひフル活用してみてください!

3. ルールで縛りすぎず、自由にやらせてみる

将棋には、厳格なルールが存在します。禁じ手もありますし、もっと基本的なことで言えば、先後交互に指す、ひとつひとつの駒の動かし方、配置なども厳格にルールで決められていますし、そのルールの上で対局が成立します。将棋にとってルールはとても大切なことなのです。

ですが、最初のうちは広い心で自由に遊ばせてあげるのも、同じくらい大切だなと思います。子どもたちは、自由に遊ばせてあげることで、いきいきと、キラキラとします。私の将棋教室でも、よく子どもたちが大盤を使って好きに駒を並べていますが、本当に楽しそうに将棋に触れています。

詰将棋は、棋力向上のためにとても効果的な訓練ですが、今の段階のお子さんにはちょっと難しいかもしれませんね。代わりに、自由に詰上図(王様が詰んだ状態の局面のこと)を作らせてみてはいかがでしょうか。

写真は5歳になる私の息子が「ママ、これなら絶対勝ちだよ!」と言って作った詰上図です。将棋のルールをご存知の方には一目瞭然でしょうが、二歩はあるし、1段目に桂馬や香車、歩があるし、ルール的には絶対にありえない局面です。でも、これで王様が動くことができないという意味では正しいのですよね。厳密にはもちろんありえないのですが、そこを広い心で(笑)許し、自由に遊ばせてあげることは、将棋を好きになる第一歩かなとも思います。

これも言うは易く行うは難し、ですね。負けてあげることと同様に、将棋を指せる人には我慢が必要かもしれません。特に、自分の子どもだからこそ我慢できないことはあるのではないかと思います。ですが、「広い心」を胸に、少しの間だけ、自由に将棋に触れさせてあげてください。

4. 褒めてあげる

子どもは褒められることが大好き
子どもは褒められることが大好き

子どもが将棋を習慣化できる5つのコツでも述べられていますが、とにかくお子さんを褒めてあげることは、将棋を好きになるためにとっても大切なことです。少しくらい大げさでも構いません。勝った時だけでなく、遊んでいる時もできるだけ褒めてあげてくださいね。

5. 焦らない

子どもが将棋好きになるまで粘り強くサポートしてあげてください
子どもが将棋好きになるまで粘り強くサポートしてあげてください

そして最後に、親御さんが焦らないということです。みんながみんな、将棋を習ったらすぐに好きになるわけではないのです。もちろん、習ったすぐそばから楽しくて楽しくて仕方がなくなるお子さんもいらっしゃいます。でも将棋には複雑なルールがありますし、お子さんによっては好きになるまで時間がかかることもしばしばあります。実際、私の息子も将棋を楽しそうに指すまで数ヶ月かかりました。今は毎日にように「ママ将棋指そう!」と言ってきます。(なかなか毎回相手をしてあげられないのですが…。)

この時期に大切なことがひとつあります。子ども大会への参加です。私は基本的に、子ども大会にはどんどん参加しましょう、と言っていますが、「将棋がまだ好きになっていない」時期に子ども大会に出ることについては、お子さんの性格をよく考えて決めたほうがいいかもしれませんね。

大会に出ると、必ず「負け」を経験することになります。負けることで、嫌になってしまうお子さんがいるのも事実。でも、将棋が楽しくなってくると、負けても楽しくなるのですよね。あまり早い段階で子ども大会に出てしまうと、もしかしたら年下のお子さんに負けてしまうかもしれない、連戦連敗してしまうかもしれない、それはそれでとてもいい経験ですし、学ぶことや身につくこともたくさんあるのですが、自分の子どもがそれでも「将棋を好き」と笑って言えるかを見極めてから大会に参加することも、将棋を好きになってもらう上では大切なことかもしれないな、と思っています。

将棋の棋力(強さ)が問題なのではなく、「将棋を好きかどうか」で判断するほうがいいのかなと思います。じつは、我が家の次女を、まだ駒の動きもおぼろげなのに、子ども大会に出してしまったことがあります。まだ5歳だったのもあるのですが、周りを大きなお兄ちゃんに挟まれ、始まる前に「ママー」と半べそで戻ってきてしまいました。我が家で将棋にあまり興味がないのは次女なので、自戒もこめて、といったところです。

いつつ将棋教室は、はじめて将棋を指すという子どもたちでも、無理なく楽しく将棋を身に付けることができる将棋教室です。体験会も実施していますのでお気軽にご参加ください(^^)

いつつのオンラインショップ神戸の将棋屋さんいつつでは、子どもたちがもっと将棋を好きになるための、「楽しい!」がいっぱい詰まった将棋グッズを多数取り揃えています( ´∀`)

将棋のほん

ほんとうに はじめての つめしょうぎ

子どもの「楽しい」「分かりやすい」にこだわった詰将棋問題集

880円(税込)

商品番号:126768545

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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