将棋を学ぶ 2019年7月25日
将棋初心者の子どもたちのつまずきポイント⑥玉を動かさない
「僕、玉を一度も動かさずに勝ったよ!」
これは将棋で勝った子どもたちがよく言う一言です。初めてこの言葉を聞いた時は正直戸惑いましたが、この後同じことを言う子どもに何度も出会いました。
子どもたちの対局を見ていて気づくのは、攻められるまで玉を動かさないということです。そして勝った子どもが言うこの言葉は「一度も玉を攻められなかった」ということを伝えたいようです。
将棋を始めたばかりの子どもにとって、玉を攻められることは怖いこと。(大人も!?)なので攻められなかったことが嬉しくなってしまうのですね。
ここで評価したいのは「玉を動かさなかった」ことではなく「相手玉を捕まえられた(詰みにできた)」ことや「玉が攻められる手を防いだ」こと。なぜなら玉を動かさないのは褒められることではないからです。
居玉が危険な理由
なぜ玉を動かす必要があるのでしょうか?理由は主に2つあります。
理由1 居玉では玉の動ける場所が少ないから
まず、下の図を見て考えてみて下さい。
左右の玉の違いは一段目にあるか二段目にあるかです。たった一段ですがこの違いが大きいのです。位置により何が変わるかと言うと「動ける場所」です。右の玉は5ヶ所動けるのに対して、左の玉は8ヶ所動けます。当然、動ける場所の多い玉の方が安全になります。
先程の図に相手の駒を加えてみるとその危険度がよく分かると思います。
右の玉は上部に銀が来るだけで横にしか動けなくなるのに対して、左の玉は下にも広く動けます。
理由2 居玉では王手飛車がかかりやすいから
それでは、もう一つの理由を考えてみましょう。これは初心者同士の対局でよく出てくる盤面です( 第1図 )。後手の手番ですが、次の手は何でしょうか?
飛車先の歩を交換し調子がいいようですが、ここで☖7七角成、☗同銀、☖1五角と打たれて( 第2図 )、これだと両方を受ける手がありません。他にも飛車側の桂馬を跳ねた後に3七角という筋があり、これも両取りがかかってしまいます。どうも玉と飛車の位置が良くないのです。
居玉の恐さをお分かりいただけたでしょうか?定跡に明るい方は「藤井システムは?」と思われるかもしれません。居玉で戦う戦法もありますが、それは居玉の恐さを知った上で学んで欲しい戦法だと思っています。
玉の守り方
ここまで読んでいただければ、玉を動かさないことの怖さをおわかりいただけたと思います。それでは、玉を守るためには、一体玉をどのように動かせばよいのでしょうか?
Point.1 玉飛接近すべからず
基本的には飛車と反対側へ動かしていきます。居飛車(元の位置のままの飛車)なら右に飛車がいるので玉は左へ、振り飛車(真ん中より左へ飛車を動かす)なら左に飛車がいるので玉は右へ動かします。
Point.2 囲いを作る
さらに、玉を守るためには玉を移動させるだけでは不十分です。将棋では玉の守りを「囲い」といいますが、玉の周りを他の駒で囲むことで、敵の攻撃からガードします。居飛車では舟囲い、矢倉囲い、美濃囲い、穴熊囲いが、振り飛車では美濃囲い、穴熊囲いがよく使われます。
Point3 相手の攻め方に合わせて囲いを選ぶ
また、囲いを選ぶ際には、自分だけではなく、相手がどのように攻めてくるのかも考慮することも大切です。着目すべき点は、守りの金と銀がどのように繋がっているかです。
それでは、具体的に見ていきましょう
例1は矢倉囲いという守り方です。この囲いは縦に金と銀が並んでいます。縦に駒が繋がっている時は縦からの攻めに強くなります。相手が居飛車の時に使われます。
例2は舟囲いという守り方です。この囲いは横に金と銀が並んでいます。横に駒が繋がっている時は横からの攻めに強くなります。相手が振り飛車の時に使われます。
戦法や囲いについては手引き帖3巻で詳しく学ぶことができます。ぜひ手引き帖を使い守り方も覚えてみましょう。
居玉のまま戦っていた子どもが玉を動かせるようになったら、上達した証です。ぜひ褒めてあげて下さいね(^‿^)
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