株式会社いつつ

子育て 2016年8月4日

読書好きになるために!読書感想文にオススメの書籍5つ(小学校中・高学年編)

金本 奈絵

先日、いつつブログで「読書好きになるために!読書感想文にオススメの絵本5つ(小学校低学年編)」というコンテンツを作成させていただいたのですが、せっかくなので、中・高学年分も書いてみようと思います(^ ^)

夏休みの宿題としての読書感想文は3〜4年生にも課せられますからね、笑

ただし、前回と同様に今回のブログでもいい読書感想文を書くための選書や、読書感想文の書き方の解説は行っておりません。

いつつブログで読書感想文にオススメの本を紹介する目的は、あくまでも読書感想文を書くということをきっかけに、子どもたちに本に親しんでもらうためです。

1.「四年変組」(フレーベル感)

登場人物の心理描写に自己投影してみて
登場人物の心理描写に自己投影してみて

今回、選書をする上で重要視したことの一つに「自己投影できるかどうか」というものがあります。小学校中・高学年というと、いわゆる青春時代に向けての多感な時期に差し掛かりますよね。

そのため、自分自身を本の登場人物に置き換えることで、より多くのことを物語から感じとれるんじゃないかなぁと思います。

今回ご紹介する「四年変組」の登場人物はみんな小学校4年生で9〜10歳です。

周りのクラスから「変組」と呼ばれるだけあって、お笑い芸人ミスターりんりんを父に持つ「鈴木っち」や、お兄ちゃんはイケメンだが、受験勉強に夢中の「ガリ勉由香」などなど変組のクラスメートはみんなとても個性的です。

この本のいいところは、新しいお母さんが若くてチャーミングな外国人タレントだったり、バレリーナ風の格好をしたガイコツのオバケが見えたりと、物語の設定はかなりファンタジーなのですが、その一方で登場人物一人一人の心理描写はとてもリアルなところです。文字数やページがそれほど多くなく、とても読みやすいですが、10歳の子どもが実際に考えそうなことや、細い心の機微が上手く捉えられているので、読む側もとても感情移入しやすいんじゃないかなぁと思います。

また、淡い恋のお話などもちょくちょく含まれるので、どちらかというと男の子よりもおませな女の子にオススメの一冊です、笑

2.「注文の多い料理店 宮沢賢治 新装 童話全集」(岩崎書店)

子どもの視点で名作の世界をのぞいてみよう。
子どもの視点で名作の世界をのぞいてみよう。

文豪宮沢賢治の童話集の中より、代表作の1つ「注文の多い料理店」をオススメします。

有名なだけに、この作品に関する感想文がネット上などでよく掲載されているのを見かけますが、すごく深く考察されたものが多いなぁという印象を受けます。

例えば、イギリスの兵隊のようなカタチをした若い紳士たちが、情勢に流される軽薄なものの象徴として捉えられていたり、また、しろくまのような犬が死んだときに紳士たちが現金換算したことについては「動物虐待」などと弾糾されたりしています。

確かに、宮沢賢治本人も色んな設定を物語に盛り込むことで、社会に対して何ら問題提議をしたかったのかもしれません。

しかし個人的には、この本が児童書であるならば、もっと子どもの気持ちになって読むのがいいんじゃないかなぁと思います。

例えば、「人を食べようとする山猫ってどんな猫だろう?」「人間をトッピングするサラダってどんな味がするんだろう?」などなど。

少し例えが残酷になっちゃいましたが、奥に隠された意味や問題意識を探ろうと深読みするよりも、心に感じるままに物語を読み進める方がきっと本を読むことが楽しくなるような気がします(^ ^)

子どもの目からのぞいたこの物語の世界を一緒に見てみたくなったので今回はこちらの本をオススメさせていただきました。

3.「キッドナップ・ツアー」(理論社)

素敵な夏のツアーに読めば読むほど引き込まれる
素敵な夏のツアーに読めば読むほど引き込まれる

こちらは、映画でも話題になった「八日目の蝉」や「紙の月」の作者、角田光代さんが子ども向きに書き下ろした作品です。図書館で角田さんの書籍が児童書に分類されていたのが意外でつい手にとってしまいました。

主人公のハルは小学5年生で、物語の最初から最後までハル目線でストーリーが展開していくのですが、ママやパパ、大人が読んでも十分楽しめる一冊です。

ストーリーの内容としては、夏休みのある日、主人公のハルがお父さんに突然誘拐されるという何とも物騒なシーンで幕開けし、そこからの親子二人での逃避行の様子が描写されるのですが、私が思うこの物語のいいところは、何よりハルをはじめ、ハルのお父さん、お母さん、親戚、逃避行の途中で出会う人々など登場人物がみんな魅力的だということです。

例えば主人公のハルはまだ5年生という設定ですが、思考回路がが異様に大人びています。もちろんお化けを怖がったりと、小学5年生らしい一面もあるのですが、全体的に思慮深さに加えて(たぶん)頭も良く、精神的にも相当強いので、既にアラサーの私もハルにはタジタジです、笑。

さらに、ハルを誘拐したハルのパパも独特の空気感の持ち主です。お金も持っていなくて、本当にどうしようもなくダメなやつなんですが、そんなパパが企てる誘拐ツアーは、夜の海で泳いでみたり、山の上の宿坊に泊まっていわくつきのお墓で肝試しをしてみたり、穴の空いたテントから星空を眺めてみたりとすごく素敵なものです。頼りなさすぎても、どこか憎めなくて、最初はぎこちなかったけど、最終的に「もっと逃げよう」といったハルの気持ちがすごくよくわかるような気がします。

夏休みの思い出って、家族や親戚みんなだったり友達だったりするのですが、お父さんと二人だけの思い出というのもあってもいいかなぁって思います(^ ^)

とにかく、夏休みに読むのにおススメしたい一冊です。

4.「秘密結社ベネディクト団」(上)(下)

考えることが楽しくなる一冊
考えることが楽しくなる一冊

実にいつつらしいお話だなぁって思います(^ ^)

この話のあらすじをかなり荒削りに説明すると、様々な才能を持った4人の少年少女が、とある天才学者ベネディクトにより集められ、世界を揺るがすような陰謀を阻止するため、一致団結して悪の親玉に立ち向かうという冒険の物語です。

この物語のどこがいつつらしいのかというと、作中に暗号やパズルがちらほらと散りばめられており、読者が色々と頭をひねりながら物語を読み進めていくことができるという点です。

特に、主人公のレニーを始め、4人の子どもたちが集まるきっかけとなった謎の寄宿学校の入学試験問題はどれもユニークなものばかりです。

「この肯定文の間違えを述べなさい」「チェスのルールでこの配置はありえますか?」「勇気がありますか?」「青と黒の正方形を踏まずに部屋を横切りなさい」などなど。

大人が頭をひねってもなかなか答えの出ない問題が次々出題されますが、才能のある子どもたちは、自らの才能を活かしてこれらの難問をどんどんクリアしていきます。

もちろん効率や要領の良し悪し、才能の有無などはありますが、1つの課題に対する解決策が1つのアプローチではないと示しているのもこの本のいいところだと思います。

ベネディクト団は今回紹介している上下巻で完結なのですが、ぜひシリーズ化して、色んな問題をクリアしていってもらいたいように思います。

5.「おれのミューズ!」(小学館)

絵画や古民家を通じて感性を磨いてみよう。
絵画や古民家を通じて感性を磨いてみよう。

この作品のメインテーマはずばり「命」です。難病による入院がきっかけに幼い頃に離ればなれになった幼馴染ミーミと再会した主人公の樹が、再びミーミと過ごすうちに「命」と向き合うようになるというストーリーです。

大切な人がいなくなるというのはどういうことなのか、自分が5体満足で暮らしていることがいかに幸せなのかなど、「命」について深く考えるというのはとても大切なことだと思います。

しかし、今回のいつつブログでは、あえてメインテーマではなく、サブテーマ(私が勝手にそのように思っているわけですが)に焦点を当てて語ってみたいと思います。

恐らくですが、この物語には「感性を磨く」といったサブテーマが潜んでいるように思います。

「おれのミューズ!」というタイトルで薄々気づく方もいると思うのですが、この話の主人公であるヒッキーこと樹の趣味は絵を描くこと。

本人曰く、「ただ絵を描くのが好きだから趣味程度に似顔絵なんかを書いているだけ」とのことですが、作中では、雨上がりの庭の梅の実に心惹かれるなど、実際のところ、他のクラスメートと比較してみても樹の感性は非常に豊かなものだと思います。

また、樹が家族とくらす家は古民家という設定です。これも個人的な見解なのですが、古民家って一般のマンションやアパートと比べてなんか生命を感じませんか?家の素材が木だったり、痛んだところに手を加えながら住み継いだり、なんだか家そのものが呼吸をしているような気がします。作中でも、樹の父や母、幼馴染のミーミがこの家に対して深い愛着を持っていると思われる描写が度々登場しており、きっとこうした環境で育った樹の感性もは人一倍磨かれるんだなぁと思います。

私がこの作品の読み方としてオススメしたいのは、主人公の樹が心を動かされたものに、読者も実際に触れてみるということです。

私がここでどんなに「古民家は息をしている」と主張したところで読んでるだけでは「何のこっちゃ」ですよね(^_^;)

やっぱり、文字を追うだけではイメージを膨らますのにも限界があるように思います。

せっかくの夏休み、時間はいつもよりたっぷりありますから、実際に古民家に行ってみて、できれば1泊するのも良し、梅の実がなければ、近所の公園で自分の好きな樹木を1本探してみるとかもまた良しだと思うんですよね。

先ほど「感性を磨く」というのはこの物語におけるサブテーマであると言いましたが、物事を感じる力やイメージする力を養うことで、メインテーマである「命」についての捉え方についても子どもたちの中で変わってくるのではないでしょうか。

低学年編では、まず絵本を好きになってもらうということに焦点を当てて、選書ならびに、レビューを行ったのですが、今回の中・高学年編では、ちょっとだけレベルを上げて、物語を楽しむという観点から読み応えのあるものをいくつか取り上げさせていただきました。

子どもたちの活字離れが懸念される昨今ですが、いち読書好きとして、夏休みという期間をきっかけに、よりたくさんの子どもたちが本に親しめるようになればいいなと思います(^ ^)

読書感想文と合わせて、夏休みに将棋の書籍も読んで見ませんか?

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この記事の執筆者金本 奈絵

株式会社いつつ広報宣伝部所属。住宅系専門紙の編集記者を経て現在に至る。

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