将棋を学ぶ 2024年10月23日
将棋の囲い 銀冠 に囲ってみよう!
囲いシリーズから「銀冠」をご紹介します。
特徴
名前 | 銀冠 |
読み | ぎんかんむり |
場所 | 居飛車の時は左側 振り飛車の時は右側に作る |
長所 | 上からの攻めに強い 「固さ」と「広さ」のバランスが良い |
短所 | 作るのに手数がかかる |
玉の真上に銀がいて、まるで王様が銀の冠をかぶっている様子に見えることから「銀冠」と呼ばれます。
囲い
まずは左側に囲う「銀冠」
そして、右側に囲う「銀冠」がこちらです。
銀冠まで組む手順
初手からの一例です。
☗7六歩☖3四歩
☗2六歩☖4四歩
☗2五歩☖3三角
☗4八銀☖4二飛
☗5六歩☖6二玉
☗6八玉☖7二玉
☗7八玉☖8二玉
☗5八金右☖7二銀
☗9六歩☖9四歩
☗5七銀☖3二銀
☗7七角☖5二金左
☗8八玉☖4三銀
☗7八銀☖6四歩
☗6六歩☖7四歩
☗6七金☖6三金
☗8六歩☖8四歩
☗8七銀☖8三銀
☗7八金☖7二金 (完了図)
ポイント
人気のある囲いなので、いきなりこの囲いを作ろうとする生徒さんもいますが、実は美濃囲い→高美濃囲い→銀冠と、順番に発展させて作っていくのがおすすめです。
銀冠は完成までに手数がかかるため、その間に相手が攻めてきた場合、囲いができていないと危険です。特に、金や銀を動かしてから王様を動かすような囲い方だと、相手が急戦(すぐに攻めてくる形)で攻めてきたときに王様が狙われやすくなります。(ちなみに、反対にゆっくり攻めてくる戦い方を持久戦といいます。)
美濃囲いを作った後に相手が攻めてきた場合は、高美濃囲いに発展させるのをやめて、その攻めに対応する必要があります。
銀冠Q&A
銀冠についての質問にお答えします。
Q相手が手順通りに進めてこないため、このように進めることができません。どうすればよいでしょうか?
A
確かにそうですね。将棋には、相手のすべての指し手に対応できる万能な手順はありません。上記の手順は一例ですので、参考程度にしてください。特に銀冠は完成までに手数がかかるため、相手が急戦で攻めてくると組みにくくなります。
ただ、がっかりしないでください。実戦を重ねるうちに必ず銀冠に組める局面が出てきます。相手も持久戦でゆっくり王を囲ってくる場合は、銀冠に組むチャンスです。
Q居飛車で銀冠を組む場合は、角はどこに動かしたらよいのでしょうか?
A 居飛車の場合は、振り飛車と違って、玉の囲う場所に角がいるので迷うかもしれませんね。居飛車で銀冠を組む場合、角の位置に工夫が必要です。
一般的な手順として、次のような角の使い方がよく見られます。
- 7七角と上がる
まずは7七角と上がり、玉を移動できるようにします。 - 3六歩〜5九角
7七角のままだと相手の桂が65のマスに跳ねてきて、両取りになる可能性もあるので、一度5九に角を引く形がよく使われます。 - 3七角と展開する
その後、3七角に展開して角を活用しやすい形にします。この配置によって角が間接的ですが、相手の玉を狙っているので、相手から☖6五歩という攻めがしにくくなります。
Q 桂は上がらない方がいいと聞いのたのですが、それはなぜでしょうか?
A 桂を上がると桂頭が弱点で狙われてしまうことがあるからですね。ただ、桂を上ることにより、攻めに使うメリットもあります。また玉のこびん(斜め上)を守ることもできます。
Q 銀冠に組む場合、なぜ美濃囲い→高美濃→銀冠と組まないといけないのですか?
最初から銀冠に組もうとするとだめですか?
A ダメではありません。ただ、居玉(王様が初めの位置にいる状態)のまま金銀を動かして囲いを作ると、王様が狙われやすくなり危険です。銀冠は完成までに手数がかかるため、相手もゆっくりと囲ってくれれば安心して組めますが、相手が急戦で攻めてきた場合には間に合わないことがあります。そういうときには、銀冠が未完成のままで戦うよりも、美濃囲いや高美濃囲いで、王様が金銀でしっかり守られている方が安全です。
Q 銀冠に組みやすい時はどんな時ですか?
A 相手がすぐに攻めてこなさそうだとわかった時ですね。例えば、相手が穴熊など手数のかかる囲いを作ろうとしている場合、急いで攻めてくる可能性は低いです。そのため、こちらも落ち着いて銀冠に組むことができます。
銀冠の弱点
下段からの攻めに注意
上にしっかりと銀がいるので上からの攻めに比較的強いのですが、下がスースーと空いています。ですので、相手に一段目に飛車や龍を置かれ、金で攻めてくる手には気をつけないといけません。
ここで
☖ 8九金 ☗9八玉
☖9九金 ☗8八玉
☖8九龍
というお馴染みの方法で詰まされたり、寄せられたりする筋があるので気をつけましょう。
離れた瞬間
また、銀冠に組む手順で一番気をつけないといけない瞬間があります。
それは、銀が冠になる瞬間、そう、8七銀と上がる(居飛車の場合は2七銀)です。この瞬間、玉の腹(玉の横のマス目)が開き、金との連結が外れるので、ここで相手に攻められてしまう、一気に形勢を損ねてしまう恐れがあります。
先手は、8七銀と7八金は、セットで指さないといけないのです。
「離れ駒に手あり」という格言があります。
これは、離れ駒があると狙われてしまう手があるよ。できるだけ離れ駒を作らないように気をつけましょう。という意味とともに、相手に離れ駒があると、その駒を狙える手があるよ、という意味ですね。
特に、相手が飛車や角などの大きな駒を持っていると、離れ駒は狙われやすいので、注意する必要があります。
私も実戦でこの銀が上がる瞬間が一番緊張します。
銀冠発展編
4枚の銀冠
銀冠をもっと発展させる方法もあります。それは角を引いて、
右の銀を図のようにくっつける方法です。玉の小瓶(右上のマス目)も
補強されます。
穴熊へ
銀冠をもっともっと発展させる方法もあります。それは穴熊囲いを作ることです。
相手がなかなか攻めてこない場合は、こんな方法も可能です。
☗9八香〜☗9九玉と穴にもぐります。
4枚穴熊へ
そして、なんと攻めの銀も囲いにくっつけてしまう方法もあります。
4枚の金銀で囲っているのでこれは固いですね。
さらに、角を☗6八角まで引いて、☗7七金寄ってめちゃくちゃ固い囲いにすることもできます。
ただ、右側(飛車がいる方)はスカスカになってしまう恐れがあるので、相手からの攻めがないかを確認してから組みましょう。
地下鉄飛車
場合によっては、飛車を下から移動して地下鉄飛車で攻める方法も可能です。
香と飛車の二段ロケットなので強力な攻めです。
相手も「え!?こんなところから攻めてくるの?」と驚くかもしれません。
おまけ:銀冠の小部屋
将棋の言葉でこんな言葉があります。
「銀冠の小部屋」
9七のマスに玉を逃げ込む際に使います。
意外と捕まりにくいのでここに逃げ込むことができると手数を稼ぐことができます。
なんだか可愛らしい響きですよね。
まとめ
銀冠はプロの将棋でも「組めたら良し」と言われる理想的な囲いの一つです。
ただ手数も長いので相手の手順次第でなかなか組むことができません。
「棋は対話なり」
将棋は相手との対話。相手の出方で柔軟に対応することが大事です。
銀冠を作りたいと思っても、必ず作れるとは限りません。
相手がいるからこそ、自分の思いどおりの展開にはならない。そこが将棋の面白いところともいえるでしょう。
ちょっと組みづらい銀冠ですが、囲いも一つのアイテムとしてぜひ持っておいてください。
いつつのブログ、かっこいい囲い名前5選にも選ばれています。
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