株式会社いつつ

将棋を教える 2016年12月28日

子どもが負けを嫌がらないために女流棋士中倉彰子が心掛けていること5つ

中倉 彰子

「負けるのを嫌がって、子どもが他の子と対局をしたがらない」

これは、将棋をするお子さんを持つお母さんからよく聞くお悩みです。

私は女流棋士として、対局で負けるととっても悔しいというお子さんの気持ちがよく分かりますし、それに「負けたくない」という感情は人としてとても自然なもので、決して悪いことではないと思います。

しかしその一方で、3人の子どもを育てる母親として、「他の子とも指してほしい」というお母さんの気持ちもよく分かります。なぜなら、負けることで学べることもたくさんあると思うし、なにより将棋をいろいろな人と指すことで、将棋の楽しさも広がると思うからです。

そこで今回のいつつブログでは、私、中倉彰子が日ごろ実践している「子どもが負けを恐れないために心がけていること」についてお話したいと思います。どこまで、皆さんのお役に立てるか分かりませんが、同じようなお悩みを持つ方の参考になればと思います(^ ^)

1.勝ち負けを「○」「×」で判断しない

お家ではお手伝いをしたらハンコというのもいいですね(^-^)
お家ではお手伝いをしたらハンコというのもいいですね(^-^)

こちらは私が子ども将棋教室で実践したことがあるものです。子ども将棋教室では、子どもたちどうしで対局することがよくあるのですが、対戦表などに成績をつける際に、勝ったら「○」(もしくは白星)、負けたら「×」(もしくは黒星)といった「勝ち」「負け」が明確に分かるような成績の付け方をしない方法を時々取り入れます。

例えばその時は、勝った子にはハンコを3つ、負けた子にもハンコを一つ押してあげるようにしているのですが、そうすれば、「勝った」「負けた」ということよりも、たくさんハンコがもらえることが嬉しくなって、お友達との対局を避けなくなります。

また、「勝った」「負けた」以外にも「あいさつがちゃんとできた」など勝ち負け以外の評価基準を設けて、それがちゃんとできたときには、対局したときと同じようにハンコを押してあげるという工夫もしました。

もちろん通常通りリーグ戦やトーナメント戦などでは黒丸の負けを書くこともあり全部このような方法で、というわけにはいかないのですが、バツをつけない方法も定期的に取り入れています。

そして、こうした工夫は、将棋教室でなくてもおうちでもできると思います。例えば子どもが家に帰ってきたら「今日はおともだちといっぱい対局したの?」と聞いてあげて、もし、「たくさん対局した」と答えたら「よく頑張ったね」と言って、オリジナルの成績表にたくさんハンコを押してあげてくださいね(^ ^)

2. 対局の相手は年齢の離れた人に

お友達に負けるのが嫌な子は、年上のお兄さんやお姉さんに指してもらおう
お友達に負けるのが嫌な子は、年上のお兄さんやお姉さんに指してもらおう

将棋は子どもから大人まで楽しめるゲームなので、どんなに小さなお子さんでも、とても将棋が強いということは十分ありえます。しかし、分かってはいても、自分と同じくらいの年齢の子や、ましてや歳下の子に負けるというのは悔しいものですよね。

そこで、もしお子さんが将棋道場などに通っているなら、同じ道場に通う少し年上のお兄さんお姉さんと対局してもらうのが、いいと思います。(通っていいない場合はご近所さんや親戚のお兄さんお姉さんにお願いしてあげてください)

同級生や歳下の子に「もっとこうした方がいいよ」とか「ここはこうだったよね」とアドバイスを釈然とできないところもあるかもしれませんが、相手が大人だったり、憧れのお兄ちゃん・お姉ちゃんだったりすると、すんなり受け入れることができるということがあります。

3. ママも棋力アップ

今回「負けるのを嫌がって、子どもが他の子と対局をしたがらない」というご相談をいただいた方の中に、特に「ママと将棋をすると絶対負けないから」という理由でママとばかり指したがるというお子さんがいらっしゃいました。

これは、ママとしてちょっと悔しいですよね(^_^;)

そこで、もちろん「将棋に興味あり!」という方だけですが、ママもこっそり棋力アップしてみてはどうでしょうか、笑

勉強法としては、子どもたちと一緒に将棋教室に通ってもいいですし(今だと女性限定の講座などもあります)、マイペースに将棋に関する書籍を読むというのもありかと思います。大切なのは、ママ自身も楽しんで将棋をするということです。ちなみに、いつつブログでも「子どもと一緒にママも将棋をするといい理由5つ」という記事を投稿しているので、よかったら参考までにご一読ください。

また、子どもたちは口では「ママと将棋をすると絶対負けないから」といっていますが、本当は「ママと将棋をすると安心できるから」ママと一緒に指したがるのだと思います。なので、ママと将棋をした結果、仮に負けたとしても、お友達に負ける時ほど悔しいというわけではないと思います。

そこで、ママが子どもたちの対戦相手となって、目一杯子どもたちに負ける練習をさせてあげてください。もしかすると、負けてばっかりだと「子どもたちがかわいそう」と思う心優しい方もいらっしゃると思うのですが、安心してください。子どもたちの方が、私たち大人よりずっと吸収力がいいので、あっという間に追いつかれてしまいます、笑

そして、子どもたちがママに勝った時はちゃんと褒めてあげてください。そうすれば、きっと子どもたちは、ずっと負けていた相手に、努力して勝つということが、とても嬉しいことなんだと気付いてくれると思います。

それに、将棋はいくつになっても楽しめるので、子どもと共通の趣味にするにはとてもオススメですよ(^ ^)


(お風呂でも将棋♪のお風呂将棋ポスター。将棋の習慣化にピッタリです!)

4.大会に参加する

子どもが他の子との対局を嫌がる場合、子どもが他の子との対局に取り組むためのきっかけを作ってあげるのがいいと思います。そして私がそのきっかけとしてオススメするのが、子ども向けの将棋大会です。

実際に私の将棋教室でも、負けが続いてやる気を失くしかけている子に「大会に出てみない?」と声をかけると、再び将棋に対する集中力とモチベーションを取り戻し、熱心に練習に励むようになります。

また、子どもの将棋大会のいいところは、負けても楽しめる工夫がたくさんなされているところです。先日、いつつスタッフのお子さんも子ども将棋大会に参加したのですが、惜しくも本戦で負けちゃった後も他のお子さんとたくさん将棋が指せたり、参加賞の景品をいっぱいもらったりと大満足だったようです。

「負けちゃったこと」を他の「楽しい体験」と結びつけることで、「負けること」は悪いことではないと刷り込んじゃいましょう、笑

5.負けてもいいと伝えてあげる。

負けてもいいだよと伝えてあげましょう
負けてもいいだよと伝えてあげましょう

将棋に限らずなんでもそうだと思うのですが、自分の子どものこととなると、つい熱が入り過ぎてしまうのが親心です。

例えば学校のテストや運動会のかけっこ、クラブ活動での試合などで子どもが負けちゃったとき、なぜか本人よりもママやパパが悔しくなっちゃうことがありますよね(^_^;)しかし、その悔しさを子どもにぶつけてしまっては、子どもは「負ける」ことを「悪い」ことだと認識してしまいます。

ママもパパもよく分かっていることだと思うのですが、「失敗は成功のもと」です。子どもが何かで負けちゃったときは「負けることは次に強くなるためのチャンスだよ。だから負けてもいいんだよ」と優しく伝えてあげるといいと思います。

私も子ども将棋教室では、この「負けてもいい」という声かけを心掛けています。

さて、今回のいつつブログでは、子どもたちが負けを嫌がらないための工夫についていくつか紹介させていただいたのですがいかがでしたでしょうか?

今日からできそうなこともいくつかあると思いますので、よかったらぜひ試してみてくださいね。

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この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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