株式会社いつつ

将棋を学ぶ 2017年3月23日

女流棋士中倉彰子が将棋初心者の子どもたちにおすすめする将棋の本5つ

中倉 彰子

最近ではもしかすると少なくなっているのかもしれませんが、特に男の子は小学生くらいになると、お友達から教えてもらうなどして、将棋を指す機会があるのではないかと思います。

お友達から影響を受けるものの中でも、テレビゲームやスマホのアプリだと、ものによっては親として少し心配になるものもあると思うのですが、なんとなく「考える力」や「先を読む力」が身につきそうな将棋であれば「大歓迎!!」ですよね。むしろ、せっかく将棋を知ったなら、そのまま興味を持ち続けてもらうことで、プロ棋士にまではならなくても、「考える力」や「先を読む力」は身につけてほしいと考えるお母さんたちも少なくないのではないでしょうか。

しかしながら、子どもが将棋に興味を持ち始めた時に、ちょっとした壁になるのが「子どもに将棋を教える人がいない」という問題です。

かつてのように近所に将棋を指す人や、将棋教室・道場などが当たり前にあればいいのですが、今の時代だと、なかなかまわりに将棋を指す大人はいないでしょうし、あったとしても期間限定の将棋講座だったり、家や学校から歩いていける場所ではなかったり、将棋初心者の子どもたちにとって、けして恵まれた環境であるとは言えません。

しかしながら、スマートフォンのアプリやネット将棋などの台頭により、将棋教室や道場が減ってしまった昨今とはいえ、実は、書店や図書館などに足を運ぶと、未だに多種多様な将棋の本が設置してあります。また、ITの技術が進歩したことによりオンラインショップも充実し、全国のどこで生活していても、色んな将棋の本がいつでも手に入るようになりました。将棋を教える人が側にいないなら、将棋の本に教えてもらえばいいですよね(^ ^)

そこで今回は、将棋をはじめたばかりの初心者の子どもたちに向けて、多種多様な将棋の本の中から将棋の入門書としておすすめの本をいくつか紹介したいと思います。

どこまで参考になるかは分からないですが、いい将棋の本に出会えたことで、一人でも多くの子どもたちが将棋を続けてくれるきっかけになればとても嬉しく思います(^ ^)

1.マンガ版 「将棋入門」(創元社)

分かりやすいストーリー展開で子どもに伝わりやすい
分かりやすいストーリー展開で子どもに伝わりやすい

「難しそう」「敷居が高い」。将棋にはどうしてもこのイメージが付きまといます。特に小さなお子さんがするとなると「ちゃんとルールを理解できるのかなぁ」とか「うちの子にはまだ漢字が読めないから」と敬遠されてしまいがちなのですが、小さな頃から将棋を指してきた一人として声を大にしていいたいことは、将棋は決してとっつきにくいゲームではなく、むしろ小さなお子さんからおじいちゃんおばあちゃんになるまで、一生楽しむことができるとっても親しみやすい競技だということです。

そのため、将棋の本の中には、将棋に対するこうした誤解を解くために、将棋初心者の子どもたちでも親しみやすい「マンガ」を使って将棋の楽しさや魅力を伝えるものがたくさんあります。そして、今回ご紹介するマンガ版 「将棋入門」(創元社)は数あるマンガで表現された将棋の本の中でも私がオススメする1冊です。

将棋の解説をマンガなどのストーリー仕立てにしてしまうと、どうしても凝った内容のものになってしまい、次第に将棋の勉強そっちのけで、マンガに没頭してしまうということも多々あると思うのですが、その点、同書は物語がシンプルなので、将棋の内容もすっと頭に入ってきます。また、登場人物のセリフや解説文も長くないので、将棋初心者の子どもたちでも、読んでいて途中で嫌にならないと思います。

私自身も子どもに将棋を教える時に気をつけなければと思うことなのですが、伝えたいことほどシンプルな言葉、シンプルな方法を使うようにしています。「将棋が好き!」という思いが強すぎて、あれもこれもと伝えたいことを詰め込みんだ結果、言いたかったことの半分も理解されていないといった経験を私もたくさんしてきました(^_^;)

また要所要所に挿入されたクイズのような演習問題や登場人物が発するちょっとしたギャグ(笑)などのちょっとした工夫も、将棋初心者の子どもたちが飽きずに将棋を続けるための秘訣なんだなぁと思います(^ ^)

ちなみに、我が家でもあまり将棋に興味がない次女がこの将棋の本を楽しそうに読んでいました^^。きっとマンガというものには、子どもを惹きつける力があるのでしょうね。

2.新ひみつシリーズ「将棋のひみつ」(学研マンガ)

読み終わったら将棋博士に
読み終わったら将棋博士に

将棋はゲームとして楽しい。だけど、将棋の楽しさはゲームだけではありません。この将棋の本のいいところは、将棋の棋力を上げることではなく、将棋のルーツや歴史、道具についてなどなど、子どもの将棋に対する好奇心の幅をぐんと広げてくれるところだと思います。

例えば、いつつブログでもよく登場する、中国のシャンチーやインドのチャトランガ、西洋のチェスといった世界の将棋の仲間たちについても、ただ紹介するのではなく、どんなルールでどんな特徴があるのか、そしてどのような経緯でそのような特徴が生まれたのかまで詳しく説明してくれています。他にも、日本の将棋が平安時代の伝来以来、どのような変化を遂げて今のような持ち駒再利用制になったのかなどなど、興味深い内容が盛りだくさんです。

また、ほとんどすべてのページに「まめちしき」として将棋トリビアが紹介されており、ページを繰るたびに子どもたちに新しい発見と驚きを与えてくれるので、この将棋の本を読み終わった後には将棋博士になれそうです、笑

3.どんどん強くなる「やさしい こども 将棋入門」(池田書店)

体系だった構成で理解しやすい
体系だった構成で理解しやすい

この将棋の本のいいところは、将棋駒の動かし方と将棋の基本的なルールを覚えた後の学習がとても体系だっているところです。「将棋駒の動かし方と将棋の基本的なルールを覚えた後」というのは、意外にも指導者によって指導法が分かれやすいポイントでもあり、また、それゆえに、将棋初心者の子どもたちもつまずきやすいポイントであると思います。

例えば、この将棋の本では、将棋駒の動かし方と合わせてそれぞれの駒の特長が説明されており、その後各駒をうまく使うための手筋について紹介されているので、駒の動き、駒の特長、手筋を関連付けて覚えやすく、また各項目が非常に簡潔にまとめられているので、将棋特有の複雑さをあまり感じず、将棋初心者の子どもたちでも、1度読めば十分理解できる内容なのだと思います。

我が家でも、長男とこの将棋の本の棒銀戦法の棋譜を一緒に盤で並べました。何回か並べるうちに、棒銀戦法の雰囲気はつかめたようです。

1の時にも少しお話しましたが、将棋の本の中には、あれもこれもと情報が詰め込まれすぎていたり、色んなテクニックや戦法をいったりきたりすることも多く、全体的にぎっしり詰まっていたり、ごちゃっとしているものも少なくありません。その点この将棋の本はサイズ感も良く、内容もスッキリ。かといって情報不足かといえばそうではなく、しっかりと将棋上達のための本質が捉えられた1冊です。

4.親子ではじめるしょうぎドリル(講談社)

数少ない、女の子っぽい将棋書籍
数少ない、女の子っぽい将棋書籍

想像に難くないと思うのですが、将棋をする女の子は将棋をする男の子よりも圧倒的に数が少ないといえます。そのため、子ども向けの将棋の本でも、主人公が男の子だったり、男の子向けのストーリー展開のものが多く、女の子が、普通に「欲しい!」と思えるような将棋の本って本当に少ないんですよね。

「親子ではじめるしょうぎドリル」(講談社)は、私が最初に原稿を書いた将棋入門ドリルです。かわいいイラストにカラフルなページ、将棋駒のシールまで付いていて女の子の好きな要素をいっぱい盛り込みました。

ただ、記入する部分がすこし少ないというお声もいただいたので、その改善点も踏まえて作成したのが、次に紹介する「はじめての将棋手引帖」シリーズです

5. はじめての将棋手引帖シリーズ

初心者がつまづきやすいポイントを追求したテキストです。
初心者がつまづきやすいポイントを追求したテキストです。

4でも少し触れたのですが、いつつの「はじめての将棋手引帖」も将棋初心者の子どもたちにおすすめの将棋の本です(^ ^)

私のように小さい頃からずっと将棋を指していると、将棋にはじめて触れるような初心者の子どもたちにとって「何がわからないのかわからない」ということがよくあります。実際子どもたちでなくてもいつつのスタッフたちと話をしている時に、うっかり将棋用語を口にして「それってどういう意味ですか?」という質問を受けることもよくあります(^_^;)

「はじめての将棋手引帖」は、こうした将棋にはじめて触れる初心者の子どもたちが分からないと思うポイントを、徹底的に追及したテキストです。具体的には、テキスト発売前のテストの段階で、対象年齢の5歳〜小学校低学年くらいのお子さんに実際に解いてもらい、どこがどのように分からないのか、その分からないポイントをどう改善すると分かりやすくなるのかと言ったことを繰り返しフィードバックしました。また、言葉だけでは伝わりにくい内容については動画による解説(QRコード読み取り)をつけるといった工夫も凝らすなど、様々な試行錯誤の上完成したのが今の形になります。

現在は、まだ3巻までの発売となっておりますが、最終的には、5巻まで出版し、将棋の基本的な戦略について一通り網羅する予定となっております。将棋のルールを覚えてから、もっと将棋の対局を楽しみたい、もっと上達したいと思った方はぜひ「はじめての将棋手引帖」を手にとってみてください。

さて今回は将棋初心者の子どもたちにおすすめする将棋の本をいつつ紹介させていただいたのですがいかがでしょうか?

将棋を指す環境にあまり恵まれていないという子どもたちが全国にはたくさんいらっしゃると思うのですが、将棋の本というツールを通じて十分将棋を学ぶこともできると思います。将棋の本の中にはみなさんが想像している以上に将棋を楽しむため、上達するためのヒントが散りばめられています( ´ ▽ ` )ノ

いつつのオンラインショップ神戸の将棋屋さんいつつでも、将棋初心者の子どもたちにおすすめのいつつの将棋の本を取り扱っています。

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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