連載:女流棋士と私のお母さん 2017年8月30日
「女流棋士と私のお父さん」 vol.5蛸島彰子女流六段
特別連載の背景について
いつつでは、日頃から子どもたちに、将棋をはじめとした日本伝統文化を普及する活動を行っています。
つきましては、実際に幼い頃から将棋に触れてきたという5人の女流棋士が、リレー方式で、将棋の魅力や楽しさ、そしてお母さんとの思い出について発信することで、もっとたくさんの子どもたちや、子育てをするママたちに、将棋を始めてもらったり、興味を持っていただけるきっかけになればと思い、今回の連載を企画いたしました。
そして、本連載ラストを飾っていただくのは、日本初の女流棋士となった蛸島彰子女流六段です(^ ^)蛸島女流六段のお母様は、蛸島女流六段が2歳の頃にご逝去されたため、お父様が父として、そしてお母様の代わりとして蛸島女流六段のサポートをしてこられたようです。そのため、今回は、「女流棋士と私のお母さん」というテーマではありますが、蛸島彰子女流六段とお父様、そして将棋についてのお話をしていただきました。
お忙しい中、快くご協力いただき誠にありがとうございます。
将棋から教わった事
子供の頃の私は、性格がそそっかしい子だったようで「じっくり物事を考えて行動に移す子」にするため、父が将棋を教えてくれました。
まず王様を詰ますことを教わり、父に大きなハンデーをつけて指してもらいました。(相撲でいえば父は手も足も使わないで相手をする感じです。)そして少しずつ上達した頃父が将棋道場に誘ってくれ、そのあと、おいしい物をご馳走してくれるというのでついて行きました。
もちろん私は弱すぎて、指してもらえる人がいません。そのときプロ棋士名誉九段の金易次郎先生が、将棋指せるの?と声をかけて下さり、6枚落ちで教えてくださいました。指し終わって将棋の筋がいいと、日本将棋連盟の初等科に入会することを勧めてくれました。プロの先生にほめられたのが嬉しくて初等科に入会したのが将棋人生の始まりでした。
初等科に入会し、月に1回試合があるのですが、勝って喜び、負けて悔しがりの連続、ある日悔しがっている私に父が強くなる為には、負けた将棋を反省することが大事。どうして負けたのか、そして同じ失敗をしないようにすれば進歩できるでしょ。反省したら、負けたという事は忘れることが大事。と言われました。
正直、今でも同じ失敗をすることもありますが、この言葉が私の支えになっています。
そしてもう一つ、高校一年生の時、将棋連盟の先生から奨励会入会を勧められ悩んでいると2歳で母親を亡くした私に、当時病弱だった父は自分に万が一の事があったとき一人で生き抜く強い精神力が身につくだろうと、強く入会を勧められました。奨励会は、全国から将棋の天才といわれる少年達が集まり腕を研く所、女性は一人もいませんでした。私は全然自信がなかったのですが、入会を決断しました。
連盟の理事の先生が女の子だったので、伸びる所まで伸ばしてあげようという暖かい励ましと、父の厳しさが両方あって続けられました。入会の時、父が練習百連敗と書いたカードを示しながら、「百連敗もおそれなければ、いつか希望は叶うものだ。」と励ましてくれました。
私は勝ちっぱなしもなければ、負けっぱなしもない。一生懸命やって負ける事はやがて力になるという考えをモットーに、将棋人生を楽しんで続けています。
連載の終わりに
さて今回で最後となった「女流棋士と私のお母さん」はいかがでしたでしょうか。「将棋は男の子のあそび」というイメージもあるかもしれませんが、「女の子でも将棋は楽しめる」「将棋を指せる女の子はこんなにも素敵」ということを体現してくださる女流棋士の方の活躍の裏には、お母さん(そしてお父さんや家族)のあたたかいサポートが色々あったことがうかがえました。改めて、将棋は親子で成長するものでもあるんだなぁと思いました(^^)
最後に、今回の連載において、
第1回を担当してくださった室田伊緒女流二段、第2回を担当してくださった岩根忍女流三段、第3回を担当してくださった鹿野圭生女流二段、第4回を担当してくださった加藤桃子初段、第5回を担当してくださった蛸島彰子女流六段、お忙しい中、素敵なエピソードをご寄稿いただいたこと、心より感謝いたします。
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