株式会社いつつ

将棋を教える 2016年2月28日

【プロ棋士が教える】子どもに将棋を教える際の5つのポイント

中倉 彰子

以前、子どもに将棋を教えるときに気をつけるべき5つのことという記事を書いて、多くの方に読んでいただけたようです。前回は心構え的な内容が多かったので、今回の「いつつの」シリーズは、子どもに将棋を教える際のもう少し具体的なポイントについて紹介させていただこうと思います。

1. 褒めるポイントをたくさん探す

始めたばかりのお子さんは、将棋の技術的には当然未熟なので、あまり褒めるところがないと考えてしまう指導者の方もいるようです。特に入門のお子さんに対しては、将棋の技術的なところを褒めるのではなくて、きちっと駒を並べられたとか、持ち駒がバラバラになっていないとか、しっかりと挨拶をできた、といった所作の部分にたくさん褒めてあげることができるポイントが隠されていますので、教える方はきちんと見つけてあげて、褒めてあげましょう。

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2. 子どもにとって身近なことに喩えて説明する

将棋用語や、将棋関連の会話って、入門者の方には宇宙語のように聞こえるようです。子どもだったらなおさらですよね。ですから、私はお子さんにとって身近な喩えを使って将棋の説明をすることをおすすめしています。

たとえば、薄い囲いを説明する時には、「3匹のこぶた」のわらの家だと紹介します。れんがの家は、堅くて丈夫だけど、作るのに時間がかかりますよね。お子さんは将棋の囲いのことを、「3匹のこぶた」に倣って考えることで、将棋の囲いについても理解を深めていくことができます。他にも、飛車が働いていない、ということをお子さんに伝えるときには、「飛車くんが動けないって泣いているよ」という表現をします。

言うは易しなのですが、喩えるのって意外と難しいんですよね。「成り」の説明の時に、ポケモンのキャラが進化することに喩えた時のこと。付け焼き刃に覚えたキャラ名を途中から忘れてしまい、ベテラン生徒からは、「先生かえってわかりにくい喩えだよー。」とつっこまれたことも。そんな失敗も乗り越えましょう(笑)。

あと、とてもおすすめなのが、駒の価値をお金に喩えてみることです! 将棋入門者のお子さんは、平気で飛車角などの大駒と小駒を交換してしまいます。これは駒損といって、将棋では極力避けなければいけないことなのですが、これを理解してもらうためにお金に喩えるとわかりやすいみたいです。つまり、飛車=10,000円、歩=100円、としたら「◯◯くんは、歩と飛車を交換したよね。それって10,000円と100円を交換したことになるよ」と伝えると事の重大さを理解してくれるみたいです(笑)。

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3. 「考えれば、できる!」を体験してもらう

始めたばかりのお子さんに対しては、ヒントを出してあげることで考えるきっかけを提供してあげることも重要です。例えば、「この駒をとられそう」「あれ〜詰んじゃうかな?」とか、直接的な答えではないけれども、その子なりに頭を使う必要があるヒントを出すのがポイントです。「考えればできる」という成功体験があると、自然に考える楽しさが湧いてくると思います。もちろん、教える方は勝ち負けにこだわらず、ちゃんと負けてあげることでの成功体験の提供もお忘れなく!

4. 1回で覚えることはないと心得よう

教える人はすべて覚えているので、駒の動きを覚えるのがどれくらい大変かを忘れてしまっている傾向があるように思います。よーく思い出していただきたいのですが、とても大変でしたよね?(^^)

将棋を始めたばかりの入門クラスのお子さんにとっては、駒の動きを覚えるだけでも一苦労。ましてや、将棋の考え方や定跡まで覚えるというのは、本当に大変なことなのです。前回教えたことを忘れていたとしても、叱ってはいけません。そういうものなのですし、きっと教えているあなたもそうでしたよ(^^)

おすすめなのが、将棋の格言。「玉の守りは金銀3枚」「金底の歩岩よりかたし」など、将棋には、たくさんの格言があります。将棋は同じ局面が出てくることはないので、丸暗記できません。暗記するのではなく、意味を理解することが大事なのですが、格言は子どもたちの頭に残りやすいので、とても有効です。

高橋和さん(女流三段)が作った 「和の将棋かるた 」は、将棋の格言がわかりやすく入っています。取り札も可愛いくておすすめです。余談ですが、彼女とは同級生なんです。そして子供も年が一緒なので、久しぶりに会った時は子育て談義で盛り上がります。

5. とにかく自分も楽しむ!

そしてなにより、教える側も楽しむことが大事だと思います。私も本当に楽しんでいます。ちょっと疲れたなという時でも、子ども教室を終えるとエネルギーをもらえるのか、元気になっています。毎回こどもたちから、いろいろなことを教わります。先生が楽しんでいると、子どもたちにも「楽しい!」が伝わるような気がします

必ずしも将棋のプロになりたくて将棋を習っているお子さんばかりではありません。教える側にとって、お子さんの成長は嬉しいのと同時に「強くなってもらわないと!」とプレッシャーになることがあるかもしれません。そんな時、将棋の成長だけではなく、その子自身の成長に役に立つといいなという気持ちで取り組んでみましょう。私も同様に、楽しんで子どもたちに将棋を教えていくことができれば、と思います!

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はじめての将棋手引帖が完成しました!

子どもに将棋を教える際の5つのポイント、いかがでしたか。

あきこ先生が作成した「はじめての将棋手引帖」が完成しました!将棋がまったく初めての方から始められる、解説と練習が一緒になった楽しい教材です。毎日のレッスンにあきこ先生の丁寧な動画解説がついていますよ。ぜひご確認くださいね。

詳しい商品説明はこちら!

お子さんに将棋を教える際には、「分かる」と「できる」の両方を体験してもらうことが必要で、必ずしもこの2つは連動しているわけではないのが難しいところです。ぜひ上に挙げた5つのポイントを参考に、お子さんに「分かる!」と「できる!」という気持ちを育んでいっていただければと思います。

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この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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