連載:全国将棋道場巡り 2017年3月7日
プロ棋士を間近に感じられる贅沢な環境〜青葉将棋クラブ〜
女流棋士中倉彰子(以下彰子)が、全国津々浦々、将棋教室・道場を訪れる「全国道場めぐり」。今回は永世名人の資格ももつ森内俊之九段(以下森内九段)が代表を務める青葉将棋クラブにやってきました。
ご対応いただいたのは、同クラブで講師を務める第32期アマ王将でもある鈴木肇さん(以下鈴木さん)。奨励会時代から、子どもスクールで子どもたちに将棋の指導をしていたという鈴木さんだけあって、「子どもが好き」という言葉通り、とても楽しそうに子どもたちに接する姿が印象的でした(^ ^)
また、代表の森内九段にも電話でお話を伺うことができました。お忙しい身であるにもかかわらず、時間を作っていただき誠にありがとうございます。
教室の立ち上げについて
彰子:「青葉将棋クラブをはじめられたきっかけはなんですか?」
森内九段:「私は子どもの頃から成人するまで横浜市青葉区で過ごしました。その後、住まいを東京に移しましたが、5年前に戻ることになり、それを機に地元で将棋の活動を始めました。当初は地区センターの部屋を借りて子ども教室をやっていたのですが、ありがたいことに、たくさんの方にご参加いただき、キャンセル待ちが出る状態になりました。せっかく将棋に興味を持っていただいているのに、お待たせするのも申し訳なくて、自分で場所を作って将棋教室を行うことにしました。」
彰子:「将棋教室と道場のどちらも運営されているのですか?」
森内九段:「はい。最初は子どもの将棋教室だけでしたが、昨年11月から準備が整ったので大人の方も通える道場を開きました。クラブには、9マス将棋などのゲームもありますので、将棋のルールが分からないお子さんでも楽しそうに遊んでいます。」
第一線で活躍する棋士に会える
彰子:「森内九段はよく教室や道場に来られるんですか?」
森内九段:「時間があるときは極力顔を出すように心がけています。常連の方も増えてきたので私も道場に行くのが楽しみです。」
彰子:「こちらでは月に1度プロ棋士による指導対局をしていると伺っています。」
森内九段:「はい。毎回3面指しで10名ほどの方との対局を行っています。出来るだけ皆様に喜んでいただけるような指導対局ができればと考えています。」
彰子:「ときどき高見泰地五段や佐々木大地四段も来られると聞いています。」
森内九段:「そうですね。お二人も青葉区にお住まいでよく立ち寄ってくれます。色々協力していただいてとてもありがたく思っています。」
彰子:「青葉将棋クラブを開校するにあたりこだわったことはありますか?」
森内九段:「子どもたちが将棋を指す環境でしょうか。ここは日当たりのいい一軒屋で、子どもたちは椅子ではなく床の上の座布団に座りながら将棋を指すことができます。また、私が子どもの頃から読んできたたくさんの将棋書籍をここの本棚に所蔵しています。これらの本が少しでも子どもたちが将棋を学ぶ上で役に立てばと思っています。」
彰子:「森内九段を始め、プロ棋士は将棋を指す子どもたちにとって憧れのヒーローのような存在だと思いますが、そんな人からアドバイスを受けたり、指導対局してもらったり、身近に感じることができるというのは、子どもたちにとってとてもいい経験であり、モチベーションにつながると思います。」
〜ここからは子ども将棋教室を担当する鈴木さんにお話を伺いました(^ ^)〜
将棋はまず楽しむことから
彰子:「鈴木さんが子ども教室を担当するようになったきっかけはなんですか?」
鈴木さん:「奨励会をやめるときに森内先生が声をかけてくださいました。特別親しかったというわけではなかったのですが、もともと奨励会時代も20歳くらいから子どもスクールとレディース教室を担当していたので、それを見ていてくださったのかもしれません。」
彰子:「今見ていても、鈴木さんは子どもへの将棋の教え方がとても上手な感じがします。」
鈴木さん:「ありがとうございます。もともと子どもが好きなので、僕自身が楽しんでいます、笑」
彰子:「青葉将棋クラブは水曜日と土曜日に子ども向けの将棋教室が開校されていると伺ってます」
鈴木さん:「はい。水曜日は上級者から有段者の棋力の高い子を中心に、土曜日は初心者から級位者の比較的将棋を覚えたばかりのお子さんを中心に将棋教室をしています。土曜日に級位者のクラスをやることには意味があって、というのも将棋を始めたばかりの生徒さんに大切なのは、指導する側にとっては興味を持ってもらうこと、そして子どもたちにとっては楽しいと感じることだと思うのですが、平日の学校終わりだと他の習い事もあったりして、疲れてしまう子も多いんです。その点土曜日の午前中だと子どもたちはとても来やすいと思います。」
彰子:「どれくらいのお子さんがいらっしゃいますか?」
鈴木さん:「12・3人でしょうか。人数が少ないと子どもたちも寂しいですが、10人いれば色んなお友だちと対局もできるし楽しいと思います。」
子どもたちにイロをつけない
彰子:「鈴木さんは子どもたちに将棋を教える上で何か意識していることはありますか?」
鈴木さん:「姿勢を正すこと。集中させること。そして先生色を出さないこと。将棋っていうのはやっぱり自分の頭で考えることが醍醐味だと思うので、子どもたちが成長していく上で指導者のイロをつけたくないんです。」
彰子:「具体的には?」
鈴木さん:「例えば、子どもたち全体的に集中力がないなと感じたら、大盤での講義をしたり詰将棋選手権をしたりします。また、このあいだは『戦法を知りたい!!』って子がいたので定跡を教えることにしたのですが、居飛車じゃなきゃいけないとか、振り飛車じゃなきゃいけないとか私が決めつけるのではなく、全部教えてあげて好きなものを子どもたちに使ってもらえればいいと思います。ただ、今日は色んな囲いについて教えたのですが、『無敵囲い』をすると、囲いの名前がかっこいいものなんで、みんな『無敵囲い』をやりたがって困っちゃいました、笑 あまり実戦で使う囲いではないのですが(^_^;)」
彰子:「子どもたちと鈴木さんが楽しそうに将棋をする姿が目に浮かびます(^ ^)」
取材後記
鈴木さんは、本当に子どもが好きなんだな〜と感じました。優しく面白く、それでいて、礼儀作法はキチッと教える。
きっと子どもたちは、将棋を教わりにきているのと同時に、鈴木先生に会いにきているのではないかなと思いました。
「子どもたちにイロをつけたくない」という言葉は印象的でした。教える側としては、自分流に教えたくもなりますが、子どもたちの個性をのばしてあげる、ということなのかなと思いました。鈴木さんは青葉将棋クラブ以外でも子ども教室の講師をされている人気講師です!
今回、この訪問とは別に森内先生に電話取材もさせていただき、青葉将棋クラブをたちあげたきっかけや想いなどもお聞きすることができました。子ども教室がキャンセル待ちになったのがきっかけとのことでしたが、確かにせっかく将棋に興味を持ったお子さんが、入会できないとなると残念な気持ちになってしまうと思います。そんなお子さんためにも、そして一人でも多くのお子さんたちに将棋を楽しむ機会を作りたいという強い想いに感銘を受けました。
第一線でご活躍されながらも、地元でのこうした将棋普及を同時に進めていくのは大変なことだと思います。青葉将棋クラブには、「お手伝いしてくれる方も多いですよ」と鈴木さんからも伺いましたが、森内九段のご人徳なのだと感じました。
教室は、一軒家で、日当たりもよく、つい「ここに住みたい〜。」と思ってしまいました(^^)。座布団に座って、将棋を指すということを大切にされた、素敵な子ども教室でした。
道場データ
道場名称 | 青葉将棋クラブ |
場所 | 神奈川県横浜市青葉区田奈町43-19 |
営業時間 | (青葉はじめ教室)毎週水曜17:00~19:00 (わくわく!はじめ将棋教室)第1〜4土曜10:00~12:00 (将棋道場)毎週土曜13:00~18:00 |
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