将棋を楽しむ 2018年4月3日
素材に一手間加えて簡単!詰将棋の作り方
近ごろいつつ将棋教室の神戸元町校に通う子どもたちの間で、オリジナルの詰将棋問題を作るのがちょっとしたブームになっております。
また教室のお楽しみプログラムで「詰将棋を作ってみよう」という企画もあります。
見様見真似ですが、難しくも楽しそうに作ってくれました
子供たちがはじめて作る詰将棋には、最初から詰んでいたり、余計な駒がいたりと突っ込みどころが満載のものもありますが、色んな配置で駒を並べながら、「あ〜でもない」「こ〜でもない」と試行錯誤を繰り返しています。
そこで今回のいつつブログでは、詰将棋問題の作り方についてお話したいと思います。
なお、今回のブログを作成するにあたって、いつつ将棋教室神戸元町校で講師を務める元奨励会員の荒木から色々解説してもらっていたのですが、荒木いわく、「詰将棋を解くのが出てきた料理を食べることだとしたら、詰将棋を制作するのは提供する料理を作るようなもの」とのこと。
つまりは、詰将棋を解くより作る方が何倍も大変ということですね。そりゃ子どもたちも、苦労するわけです、笑
大変な分、詰将棋の問題を作ることには奥深さやロマンがを感じるような気もします。
少し難しいところもあるかもしれませんが、詰将棋づくりにチャレンジしたいという方はぜひご一読ください。
1.実戦のシーンを切り取る
まずはどちらかが相手の玉を詰ますまで一通り対局を行います。そして詰みのシーンから遡って行けば、詰将棋が出来上がります。
1手詰めの詰将棋を作りたいならば、詰の直前の場面を、3手詰の問題を作りたい場合は、詰の状態から3手戻したシーンを切り取ればいいわけです。
これなら、将棋初心者のお子さんでも比較的簡単に作ることができますよね。
2.詰みのパターンを問題にする
将棋をはじめたばかりの初心者の頃は、相手の玉を詰ますことを指針に将棋を指していくわけですが、少し棋力が上がってくると、玉を取る場面ではなく、頭金や腹金など、いわゆる「詰みの形」を意識しながら攻めるようになります。
詰みの形とは、この形になったらあと○手で詰むというパターンのことで、詰将棋界ではこの形を「素材」と呼び、詰将棋作家さんもこの「素材」にアレンジを加えることでオリジナルの詰将棋問題を制作しています。
また、あたり前ですがたくさん素材を持っていればいるほど、作れる詰将棋のバリエーションも豊富になります。
3.既存の問題をアレンジする
1手詰めの詰将棋の問題を2手引き伸ばすと3手詰めになります。このように、元からある詰将棋にアレンジを加えることで新たな詰将棋が出来上がります。
さて、今私は簡単に「既存の詰将棋問題の手数を引き延ばせばいい」と言いましたが、この「手数を引き延ばす」というアレンジが意外と難しいので少し解説したいと思います。
写真は1手詰めの詰将棋問題です。
詰までの手数を引き伸ばすためのステップとしてまずは、どのようにすれば玉の逃げ道を増やすことができるかについて考えます。
写真の場合だと、3一の玉を3二に動かすことで、玉の後方に逃げ道を確保することができますね。
さて玉の逃げ道を増やすことができたら、次のステップとして今度は、盤上の駒を動かしたり、持ち駒を追加したりします。
例題の場合だと、玉を動かしただけだといきなり詰んでしまうのでまずは歩を3四に移動します。その後、持ち駒が金1枚だけだと詰むことができないので、持ち駒に金を1枚追加と、頭金を素材とした3手詰みの詰将棋ができますよね。
ちなみに、盤上の駒を減らすという方法でも詰みまでの手数を引き伸ばすことは可能ですが、こちらはかなり難易度が高くなるので、まずは①玉の逃げるスペースを増やす②それに伴って持ち駒や攻め駒を増やしてみるという基本的な方法を試してみてください。
4.ストーリーを考える
ストーリーを考えるとは、まずは相手玉が詰むまでのあらすじを考えて、そのあらすじに沿って、配役(どの駒をどこに配置するか)やシナリオ(それらの駒をどのように使うか)を考えることを表しています。
まるで、映画を作るみたいですね。
さてそれでは、早速映画監督ならぬ詰将棋監督になったつもりで詰将棋のストーリーを作ってみましょう。
3手詰の詰将棋問題を作るとして、相手玉を詰むまでのあらすじは「角を打って2一にいる玉に王手かける」「相手玉が逃げる」「角が成って詰ます」といった感じにします。
次に配役ですが、攻め駒1枚だと詰むことができないので、主役である玉と角に加えて、今回は脇役に金と歩をおきます。ちなみに、攻め駒に使う脇役は、慣れるまでは、飛車や角、金といった価値の高い駒を使うといいでしょう。
写真のように、駒を並べると、例えば、▲4三角△3一玉▲3二角成という手順で詰ますことができ、3手詰めのストーリーが出来上がりますね。
実はこの方法は、初心者の子ども達には少し難しいかもしれません。なぜなら、最初の配役(駒の配置)を決めるには、ある程度の素材を既に身につけている必要があるからです。
しかし、言い換えると、たくさんの素材を持っていればそれだけ深みのある作品が作れるということです。
5.とにかく詰将棋を解く
2番では、詰みの素材をたくさん持っていればいるほどバリエーション豊かな詰将棋問題が作成できるというお話をし、4番でも持ち合わせの素材の多さが詰将棋のストーリーに深みを持たせるというお話をさせていただきました。
つまりのところ、いい詰将棋の問題を作るには、よりたくさんの素材を身に付けるということに集約するように思います。
さて、それでは、たくさんの素材を身に付けるためにはどうすればいいのかというと、それはとにかくたくさんの詰将棋の問題を解くしかありません。
中には詰将棋があまり好きではないという子どもたちもいるかもしれませんが、
詰将棋の問題を解くことは棋力向上の上でもとっても効果的です。
対局続きで思考が煮詰まってしまった時や、移動の時など、少しの時間でもいいので、子どもたちにはぜひいいことずくめの詰将棋に取り組んでもらいたいと思っています。
さて、今日は詰将棋の作り方について色々お話させていただきましたがいかがでしたでしょうか。
実際、今回ご紹介した方法で詰将棋を作ってもらうと分かると思うのですが、詰将棋には王手をかけないといけない、回答は一通りというルールがあり、そのことが詰将棋づくりを難しくしています。もし、まだ詰将棋を自分で作るのはハードルが高いなぁと思ったら、簡単な「詰む将棋」の問題を作ってみるのもいいですね。
また、制作過程こそ大変そうではありますが、自分でオリジナルの問題を作ってみたり、作った詰将棋をお友だちや家族に出して反応を見るというのは、結構楽しいですし、詰将棋を作るための作業は、ただ大変、ただ楽しいだけではなく、ちゃんと棋力アップにも繋がります。特に、将棋における構想力を磨く上でのトレーニングにもなります。時間があればぜひチャレンジしてみてください。
いつつの書籍、ほんとうにはじめてのつめしょうぎは、駒の動き方を覚えはじめた初心者のお子さんが気軽に取り組める問題がたくさん載っています。詰将棋に親しむファーストステップとしておすすめの一冊です。
いつつ将棋教室でもたくさん詰将棋の問題を解きます
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