連載:東京新聞「子育て日記」 2016年5月9日
上海での収穫 -プロ女流棋士中倉彰子 子育てブログ
春休みに、マイと二人で上海に行っていました。「日中交流子供大会」に参加するためです。
私は、現地の子供達に指導対局をするお仕事です。
マイにとっては初めての海外です。飛行機に乗ること3時間。上海空港に到着。
着陸の時は少しどきどきするようで、ママの腕をつかんでいます。
さて、空港では、以前、NHK将棋の番組などでお世話になっていた方が出迎えてくれました。引退し、今は上海で将棋普及の活動をしている方です。懐かしい思いで再開しました。
最初は、近くの上海動物園に連れて行ってくれました。孫悟空のモデルになったサルが人気のようです。マイもデジカメで撮影し、楽しそうです。とても広い動物園です。
動物園をめぐりながら、恵下さんに、上海での将棋事情をききました。
上海では、小学校での授業で、課外授業として「日本将棋」を取り上げてくれているところが多く、現在でも22校ほど「日本将棋」の授業があるとのこと。
なぜ日本将棋かといえば、礼儀作法が学べる・論理的な思考が学べる・集中力がつくという点に着目されてとのこと。
そして、目に見えてその効果があるので、親御さんへの印象も良いのだそうです。
一度「日本将棋」を取り入れた校長先生が、他の学校へ転勤になり、またそこ学校でも日本将棋を取り入れる。また隣の学校も、ということで、広がっていったとのことです。
そこには、許さんという20年以上に渡り、上海での将棋普及に貢献してくださっている方の存在が欠かせません。体育、美術、音楽と同じように「日本将棋」も取り入れられているなんて、驚きました。
のべ200校(確認)ほどの学校が、日本将棋の授業をしているとのことです。観光も楽しみ、3日目の夕方からは日中友好将棋交流会。マイも上海の女の子と対局しました。言葉は通じなくても、将棋を通して交流できます。
その間、私は女流棋士としてご挨拶。元気よく「ニーハオ!」と挨拶。発音がきっと上手ではないけれど、現地の言葉でご挨拶。
ニーハオと答えてくれた子供もいるので、「シェシェ!」。マイは、そんなママの姿に「笑ってた子もいたよー。」とはずかしそう。
私の指導対局中にマイが戻ってきました。2局目は勝ったよう。その将棋で、とても良い手をさせたそうなのです。部屋に戻ると、私のパソコンに将棋の画面をだし、再現しようとしてもなかなかうまくできません。
「駒を捨てて、角と龍をつかって上手に攻め切れた!」ようなのです。(本人談)
うまくその局面を再現できず、「おかしいなーいい手だったのにー。」と、残念そうなマイ。
次の日は、朝早くおきて、「少年宮」があるロンサン中学校へ出発。「ロンサン杯将棋大会」に参加します。この中学校では、日本将棋が授業の一つに加えられています。
開会式では、私は来賓席に座り、マイは、選手の席に座ります。まわりに、日本人がいなく、中国人ばかり。やんちゃな男の子が、めずらしいのか、マイにはなしかけてくれます。でも当然わからない。
人懐っこい子供たちなので、悪気は決してないのですが、マイは、不安になってしまったようで、半泣きで、わたしのところに走ってきました。「何言ってるかわからないのに、いっぱい話しかけてくるー。」と。
トイレに一緒にいって、涙を拭いて、落ち着きました。さて、マイは、小学生の女の子の部に出場。成績は3勝2敗とのこと。入賞することはなかったけれど、まずまずで嬉しかったよう。
私も、最初は、皆の将棋を観戦していましたが、終わった子も多くなってきたので、数人集めて、詰将棋の問題をだしてあげました。王様「わんしゃお」など、駒の名前を中国語の発音を教わりながら、会話しました。
マイも横でみていて、「これが正解だよ。」と話しています。「お願いします」という日本語を、教えたり。皆可愛くて、あっというまの時間でした。
こうした子供同士の交流を通して、国同士が双方理解して仲良くできるといいなと思いました。マイの初めの海外は、実り多いものとなりました。
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この記事は、東京新聞にて中倉彰子が連載している「子育て日記」と同じ内容のものを掲載しております。
:『東京新聞』2015年4月24日 朝刊
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