株式会社いつつ

将棋を学ぶ 2017年10月3日

悪手を指さないようにするためのコツ

荒木 隆

将棋を指す上で、どうしても相対してしまうものが「悪手」です。悪手とは文字通り悪い指し手のことで、形勢を損ねる原因となってしまう手のことです。

逆に言えば、相手が悪手を指してくれれば、それだけこちら側にチャンスが広がります。このように、悪手は形勢と密接な関係をもっており、この数を少なくすればするほど勝利に近づくと言っても過言ではないでしょう。

今回のブログでは、この「悪手」を指さないようにするためのコツを伝授したいと思います。

1.好手を知る。

好手にたくさん触れて直感を磨きましょう!

悪手を指さないように注意するといっても、そもそも自分の指した手が良い手なのか悪い手なのか解らない……という悩みを抱えている方は、少なくないと思います。

そんな方にオススメな勉強法が、「棋譜並べ」です。(ちなみに、棋譜とは対局者の指し手を記録したものです。)
特に、プロ棋士のような強い人の棋譜を並べることを推奨します。

なぜ棋譜を並べることが悪手を減らすことに繋がるのかというと、プロ棋士の棋譜は好手の宝庫だからです。

まず、”悪手”を指さないようにするには、悪手が具体的にどのような手なのか、そして同時に悪手と真逆の性質を持つ”好手”がどのような手なのかを知る必要があります。

ドライブに例えると、青信号で進む、赤信号で止まる、というルールを知っているから安全に通行できるのであって、もしこれを知らないまま車を運転していたら、大変なことになってしまいますよね?それと同じような理屈です。

強い人の棋譜をたくさん並べると、おぼろげに「こういうことをすれば良いんだ」というパターンが見えてきます。抽象的な形であれ、そのような成功経験をイメージできるかどうかが大事で、それが上手く浮かんでいれば、実戦で応用することが可能です。
逆に、「今からこの手を指そうと思っているんだけど、それは棋譜並べで見たことがないから好手じゃなさそうだ」といった要領で悪手を回避する効果も期待できます。

悪手を指さないために好手を知る。実力向上には打ってつけの方法だと思います。

2.格言に則る

格言は数学の公式のようなもの
格言は数学の公式のようなもの

世の中には「石の上にも三年」「沈黙は金」といった格言がありますが、将棋にも同じように格言が存在します。例を挙げると、「王手は追う手」「玉は包むように寄せよ」といったものがあります。

この格言は先人の知恵が詰まった言葉であり、概ね正しい教えであると言えます。先述した格言を用いて、具体例を示してみましょう。

画像の局面で、持ち駒の金を▲3二金と打つと△5二玉と逃げられます。これは「王手は追う手」という格言通りの展開で、相手の玉を捕まえることができません。すなわち、悪手です。

ここでは▲6二金と打つ手が「玉は包むように寄せよ」という格言に則った一手で、後手の玉を捕まえることができます。

これは格言に沿うことで、正しい着手へ辿り着くことができる好例だと思います。

このように、「この場面ではこうすれば良い」という基準を設けて、それを忠実に守れば悪手を減らすことができると思います。

将棋には「玉の腹から銀を打て」「両取り逃げるべからず」など、他にもたくさんの格言があります。そういった知識を多くインプットしておけば、対局を有利に進められるのではないでしょうか。

3.持ち時間に余裕を持つ

持ち時間が多いと、精神的にもゆとりができますね。

大会やネット将棋で将棋を指すときに、切っても切れない関係にあるものが一つあります。それは、「持ち時間」です。

当然の理屈ではありますが、思考時間の短さとミスの多さは比例します。これはプレイヤーの実力とは無関係で、誰に対しても同じように起こり得る現象です。

相手の玉が詰むかどうかの瀬戸際で、時間に追われ悪手を指してしまい逆転負け……という悔しい思い出は、誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか?

そのような状況に陥らないためにも、持ち時間に余裕を持たせておくのは大事な考え方です。
序盤は定跡通り進めて時間を消費しない、相手の考慮中に指し手を用意しておく、といった戦略が考えられます。

4.直前に指した手の意味を繋げる

方針は一貫させましょう。

突然ですが、豆腐のみそ汁を作ろうと思い立ったとき、皆様はどのような行動を取りますか?

多くの人は、食材を揃え、お湯を沸かしてダシを取り……と、その目的を遂行するための工程に移行するかと思います。

しかし、この行動をどこかで打ち切ってしまうと、少なくとも「豆腐のみそ汁を作る」ということに関しては徒労に終わってしまいますよね。将棋でも、これと同じような理屈が通用します。実例を見ていきましょう。

画像の局面は、3九のマスにいた銀を3八銀→2七銀と繰り出したところです。
これは「棒銀」という作戦で、飛車と銀を協力することで、敵陣の突破を狙う指し方です。最終的には、2三のマスまで進めるのが目標です。

この後、2六銀→2五銀と銀をどんどん前に出して敵陣を攻めるのですが、もしこの進軍を途中で止めてしまうとどうなるでしょうか?

そうなると、棒銀の形を作った手が無駄になってしまい、役に立たない手=悪手となってしまいます。

このように、自分が直前に指した手とこれからの指し手の意味を関連させないと、方針が定まらず支離滅裂になってしまいます。

逆に言えば、方針を貫いてそれに基づいた手を選べば、悪手を回避することができると言えます。

5.自分の棋風を知る

将棋の棋風を身につけよう
将棋の棋風を身につけよう

将棋には、棋風というものが存在します。これは、プレイスタイルと捉えてもらってOKです。つまり、プレイヤーそれぞれの個性のことですね。

棋風は大きく分けると「攻め」と「受け」の二つに分類されますが、他にも「慎重」「過激」「大胆」「堅実」「剛直」「柔軟」など、数え上げればキリがなく、まさに十人十色と言えるでしょう。

人間誰しも得手不得手があるで、自分の棋風と真逆の展開になってしまうと、どうしても悪手を指す確率が上がってしまいます。

自分がどのような状況になると力を発揮できるのか、それを把握してそういった展開に誘導できれば、悪手を減らす結果になると思います。

いかがでしたか?人間である以上、完璧に指すことは極めて難しいですが、上記の5つのコツを意識すれば、今までよりも悪手を少なくできると思います。皆様の参考になれば幸いです。

悪手を指さないためには、好手を覚えることが大切でしたね( ´∀`)「はじめての将棋手引帖」では、様々な好手について解説しています٩( ‘ω’ )و

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この記事の執筆者荒木 隆

1990年生まれ。滋賀県大津市出身。平成16年9月森信雄七段門下で「新進棋士奨励会」に6級で入会。三段まで進み、平成28年9月に退会。平成29年3月株式会社いつつに入社。奨励会員時代の将棋教室やイベントで、子どもたちへの指導の経験は豊富。

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