将棋を楽しむ 2016年5月25日
世界中の人たちと楽しめる!! 将棋の兄弟・先祖たち5つ
将棋を指せるようになることの大きな魅力として、老若男女多くの人が指すことができるため、歳が離れていても・体力差があっても、真剣勝負を楽しむことができる、ということがあると思います。
でもそれって、日本だけでは?って思われるかもしれません。日本将棋は、確かに日本が一番多く親しまれています。
でも、実は将棋の「兄弟たち」は世界中でこの瞬間にも楽しまれています!みなさんご存知「チェス」は将棋と同じ祖先を持つ兄弟なんですよ。しかも、将棋の兄弟はそれだけじゃなく、そのほかにもまだまだたくさん兄弟がいるんです。 今日はそんな世界中にいる「将棋の兄弟たち」を5つ紹介してみたいと思いますー。
1. チャトランガ –なんで世界中に将棋の兄弟がいるの?–
世界中で楽しまれているチェスと将棋の祖先が同じ、という話を先ほどしました。こういった将棋の兄弟たちの祖先に当たるのが「チャトランガ」です。その起源はなんとインド!と言われていますよ~。
チャトランガが楽しまれるようになった時期が正確にわかっているわけではありませんが、おおよそ紀元前2~3世紀だと言われています。今からもう2000年以上前に、将棋の先祖はインドで楽しまれていた、という計算になりますね。
このチャトランガが、西に東に伝播していき、それぞれの地域の環境に合わせて変化していったのが、以下で紹介する「将棋の兄弟たち」であると言われています。何やら壮大なテーマになってきました笑。
チャトランガの駒の種類は、「王・将軍・象・馬・戦車・兵」です。この時から、王は周囲に1マスずつ、象は斜め4方向に2マス、馬は全方向の桂馬の位置に、兵は前1マス、というような基本的な動きは決まっていて、様々な将棋の兄弟たちの中にこの動きが残っているんです。
日本の将棋と比較してみましょう。インドから日本に伝来してくる中で、日本には存在しなかった「象」が失われ、将軍が「金将」、「銀将」などに細かくわけられていく、といった変化があるんですね。とてもおもしろいです。
2. チェス –最も国際的な将棋の兄弟–
ヨーロッパで人気!な将棋の兄弟です。日本にも愛好家が多いように、将棋の兄弟たちの中で最もメジャーな兄弟と言えるでしょう。ハリーポッターなど、ヨーロッパの娯楽作品の多くに登場するため、ご存知の方も多いかと思います。
インドからイスラム世界を介してヨーロッパに入ってきたと言われており、8世紀頃と思われるチェスの駒が発掘されています。そこから15,16世紀頃まで、ヨーロッパ文化の中で、様々な独自性が加えられてきました。
チェスの駒の種類は、「王・女王・城・僧侶・騎士・兵」です。この中で女王と僧侶以外は、チャトランガと動き方が同じ(城=戦車、騎士=馬)なのですが、ヨーロッパの文化に触れた時に、それぞれが城や騎士、というふうにかわっています。新しく生み出された駒が、「女王」と「僧侶」というのも、ヨーロッパらしさを感じますね。
3. マークルック –日本将棋に近い形の兄弟–
タイで楽しまれている将棋の兄弟であり、特に昔の日本将棋と近い特徴を持つ部分が多くあります。
- 銀と同じ動きの、「根(コーン)」という駒がある。
- 兵が敵陣3段目に入ると「成る」。
- 自陣1段目に王将等があり、3段目に兵が並び、2段目には何もない。
こんなところに「将棋によく似た兄弟が!」という感じですね!
しかし似ているといっても、日本の将棋には「持ち駒を再利用できる」という唯一のルールがあるため、ゲームの感覚は全く異なったものになります。兵の動き(兵が向かい合ったら、その兵をとれる将棋の兄弟は意外にも珍しいです)などから見ても、ゲーム感覚はチェスに近いように思います。
マークルックの駒の種類は、「君(クン)・種(メット)・根(コーン)・馬(マー)・船(ルア)・貝(ビア)」です。駒の見た目は、仏教寺院の影響を受けているとも言われています。これもまたタイらしさを感じさせるものですね。
4. シャンチー –中国感あふれる様々なルール–
シャンチーは中国語圏で楽しまれている将棋の兄弟です。人口が多いため、競技人口はチェスに次いで、あるいはそれに並びうるくらい多いと言われています。
シャンチーで注目されるべきはその盤面です!盤上の中心には揚子江・黄河がモデルともいわれている河があり、象は渡ることができません!(象は河を渡れそうなイメージもあるのですが笑)。敵陣・自陣の後方中央にあるのは九宮です。将や衛士たちを模した駒は、ここから出ることができません。
また、マスの中に駒を置くのではなく、交わった点の上に駒を置くというところも、囲碁からの影響を受けたと言われています。駒が漢字なのもあり、見た目から中国感あふれるものになっていますね。
シャンチーの駒の種類は、「将軍・衛士・象・戦車・馬・大砲・兵」です。これまで紹介した駒の動きになかった新しい動きをする駒として、「大砲」が挙げられます。縦横自由に動くことが可能ですが、駒を取る時には、取りたい駒との間に1つ何らかの駒がある場合のみ、それを飛び越えて駒を取ることができる、という変わった動きをします。あいての将軍を詰ませる上でも強力な駒です。
5. チャンギ –中国の影響と独自のルール–
いよいよ5つ目のチャンギを紹介します。朝鮮半島で楽しまれている将棋の兄弟です。中国圏で楽しまれているシャンチーに似ている部分が多いのですが、その中でも独自のルールや動きがある将棋の兄弟になっています。
駒を交わった点の上に置くこと、自陣後方中央に宮が設けられていること、駒の種類やだいたいの駒の動かし方などがシャンチーと似ている部分です。
しかし、盤上から河がなくなっているため、象も敵陣に入っていくことができます。また、一部の駒の動かし方が異なったり、パスができたり、ということも相違点として挙げられるでしょう。見た目はそっくりでも、内容は異なったゲームになっています。
チャンギの駒の種類は、上で述べたシャンチーと同じで、「将軍・衛士・象・戦車・馬・大砲・兵」です。このうちでは、兵や象が基本的な動き方の部分でちがいますし、大砲や車も宮中では動きがちがいます。そういった部分において、細かい価値観の差異が垣間みえておもしろいですね。
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以上では、将棋の兄弟を5つ紹介してきました。その中で強く感じたことは、「チャトランガ」を、様々な地域が、自分の地域の環境・文化などに合わせてアレンジしてきた、という将棋の兄弟たちのユニークさです。
こういうことを実際に学んでみると、将棋の特殊性についてもより興味が湧いてきます。あれ、なんで「飛ぶ車」なんだろう?とか、「角行」ってなんだろう、この動きはどのように生まれてきたの?とか、八方桂から前方2箇所だけしか動けない桂馬になった理由はなんでなの?そして、なんでこの盤の大きさ、駒の形なんだろう…などということです。
また「日本将棋」というのは、日本文化がぎゅっと詰まっていることがわかります。「取った駒を再利用できる」は代表的ですが、それぞれの駒の動きが小さいので(角と飛車以外)、協力して攻めないといけない。
「玉を手数をかけて囲う」また「五角形」という形も日本らしいですね。(いつつの会社の由来です!^^)
将棋の兄弟を通して、将棋についての疑問が深まり、より楽しく将棋が指せるようになると思います。将棋に興味を持ったお子様などにもぜひぜひお話ししてあげてくださいね。
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参考文献はこちら。将棋の歴史を学ぶ上で、これらの本や文献はとてもおすすめですよ〜
- 西條耕一, 2006,「将棋の日本伝来と世界の将棋」『電気通信』69(710),pp.36-40.
- 岡野伸, 2009,「チャンギ(韓国・朝鮮将棋)の歴史」『大阪商業大学アミューズメント産業研究所紀要』11,pp.103-126.
- 岡野伸, 2005,「タイの将棋『マックルック』」『大阪商業大学アミューズメント産業研究所紀要』7,pp.85-98.
- 増川宏一, 1996,『将棋の起源』平凡社.
- 安恵照剛監修, 2003,『将棋のひみつ 学研まんが 新ひみつシリーズ』学研.
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