株式会社いつつ

将棋を学ぶ 2016年1月27日

子どもが将棋を指すと考える力が身につく5つの理由

中倉 彰子

将棋は勝ち負けを競うボードゲームなのですが、勝ち負けを競う過程において考える力を育むことができる一石二鳥のゲームです。相手の指し手や持ち駒が完全に公開されているので運の要素がなく、まさに考える力の勝負なのです。小さいころから考える力を養っておくとさまざまなことに応用することができて、将来プロの将棋棋士にならなくても役に立つことがたくさんあると思います。 大学受験においても「考える力」が重視されてきているという新聞記事もありましたし、先日郡山で開催した学研エデュケーショナルさんとのイベントでも、親御さんの「考える力」に対する興味の強さをものすごく実感しました。というわけで、今回の「いつつの」シリーズは、「子どもが将棋を指すと考える力が身につく5つの理由」と題して、将棋の売り込みをしてみたいと思います(^^)

1. 絶対的な正解のない問いに対して自分の頭で考えなければならない

将棋の指し手は10の222乗(1000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000です、たぶん 笑)とも言われています。つまり、ふたつとして同じ棋譜(将棋の進行)はありません。自分の頭で考えて指し手を進めていく必要があるんですよね。勝つという目標はみんな同じかもしれませんが、勝つための過程はひとそれぞれでぜんぜん問題ないのです。プロでも同じ局面を見て、意見が割れることもよくあるので、それだけ絶対的な正解がない世界だと言えるかもしれませんね。
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現代ではインターネットが普及し、Googleという大先生が身近にいるので、考えなくても調べることですぐに答えに到達できる環境になってきています。ですが、実社会においては検索して答えにたどり着かないこともたくさんあります。私もLPSAの事業部長やいつつの代表をつとめる中で、検索して答えが見つかったらいいな〜って思いながら日々悩んでいますが、きっと社会人の方々は日々こういう答えがない問題に取り組んでいらっしゃるんだろうなーと改めて思いました。

絶対的な答えがない問題に取り組むことで、将棋を通じて考える力を育んでいただけたらと思います(^^)

2. 複数の選択肢の中からひとつに決める力(「決断力」)がつく

過去にすべてのタイトルを独占したことで有名な羽生善治名人が「決断力」という本を書かれているのですが、それくらい将棋は決断力を必要とするゲームです。羽生先生の著書で詳しく説明されているので、興味のある方はぜひそちらをお読みいただきたいのですが、私がこのブログで強調したいのは、将棋にはたくさんの選択肢の中から1手しか指すことができないため、たくさんの候補手の中からメリット・デメリットを考えて1つ選ばないといけないということです。
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私もいつつの仕事をしていて実感するのですが、「捨てること」「やらないこと」を決めるのはとても難しいですね。将棋も同じで、指したい手がたくさんあったとしても、指せる手はたったひとつです。あとの手はあきらめないといけません。物事に優先順位を設定し、やることとやらないことを決めるというのは、本当に考える力を育んでくれるな、って思っています(^^)

3. 相手の視点に基づいて考えることができる

将棋は1対1で対局するゲームで、当然相手も全力で立ち向かってきます。将棋を始めたばかりの方は、自分にとって都合のいい進行を頭のなかで描いてしまう傾向があるのですが、将棋に慣れてくると自分が相手だったらどのように対応するだろう、と相手の視点にたって物事を考えることができるようになってきます。
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ひとりひとりは多様な視点を持っていて、自分とは違う考え方をしているということに気づきます。感想戦(将棋の対局後に、対局者同士でおこなう反省会のこと)で相手の考えに触れることによって、自分とは異なる視点を得ることができ、新たな発見があるとともに、自分の視野を広げることもできるのです。

4. 知識を応用する力が身につく

将棋は、ルールを知識として持っている必要があり、また上達しようと思えば定跡という「型」のようなものを覚えていく必要があります。ですが、ルールや定跡を知っているだけでは、不十分なのです。算数で言うと、ルールを覚えたのは四則演算の決まりを覚えたようなもので、定跡を覚えた状態は公式が頭に入った状態です。でも、問題を解いていくにはそれだけでは不十分なこともよくありますよね。それと似ているかもしれません。

定跡で覚えたことを、自分ひとりでその通りに実行していったとしても、相手もいることですし、マニュアル通りには進まないことがほとんどです。じゃーどうするのかというと、定跡という知識に基いて自分なりに考えて柔軟に変化・対応する必要があるのが将棋です。

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知識を知恵に変化させる」と言っていたプロ棋士もいましたが、知識は持っているだけでは宝の持ち腐れで、どうやって使っていくのかを将棋を通じて学んでもらえたらうれしいです(^^)

5. 考えることが楽しくなる

まさに「将棋」は考え続けること=面倒なことをする世界です(笑)。将棋を通して、「考える」ことを自然に実体験することができますし、そしてなにより将棋を好きになると、上記の1〜4を自然とこなしていくことになります。将棋を楽しむことで、考える力を身につけていけるなんて、素晴らしいですね(^^)

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将棋はこのように、「正解が決まっていないことについて深く考える力」を育んでくれるゲームとして、お子さまの成長の上でも非常に重要なのではないか、というように株式会社いつつでは考えています。

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この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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