将棋を学ぶ 2021年8月8日
「玉将」と「王将」の2つの駒の違いについて
親子入門イベントや、いつつ将棋教室での体験会では、
参加する子どもたちに、目の前にある将棋の駒袋から盤の上に駒を出してもらいます。
駒が飛び散らないように、そーっとだした後、山盛りになっている駒の中からまずは「王様2枚」を探します。
見つけた後は「2つの駒の違いは何かな?」と聞きます。
じーと2枚の駒をみつめる子どもたち「あ、一つは点がついてて、もう一つにはない!」と元気よく答えてくれます。
なぜ違いがあるのかな?
そう将棋には「王将」と「玉将」が1枚ずつ入っています。
「王将は将棋が強い人、年が上の人が持ちます」と将棋にはそのような作法があることを伝えると、そうなんだぁという顔をしてくれます。
プロ棋士の世界でも、一般的に段位の上の人が「王将」下位者が「玉将」です。
将棋は単なるゲームではなく、そういった作法があるんだ、ということをまずは感じてもらい、
次に、「3つの礼」のお話へつなげていきます。お互い一礼をして「お願いします」と言って対局を始め、
負けてしまった時は「負けました」最後は「ありがとうございました」と礼をして終わる。
という「3つの礼」ですね
本や棋譜では「玉」で統一
さて、王と玉ですが、棋譜ではどちらも「玉」と書きます。
私も若かりし頃、記録係として「棋譜」を書くことがありましたが、
棋譜上は、どちらも「玉」で統一して書きます。
将棋の本では、図面の中に、王と玉を分けずに、玉2枚が書かれているのが一般的です。
はじめての将棋手引帖でも、2枚の「玉将」表記で統一しています。
背景には「玉将が先に考案され、後から王将が生まれた」という理由があるからのようです。
先日奈良市の東大寺の近くの興福寺に行きました。興福寺の旧境内で日本最古の将棋駒が見つかったのですが、
発掘された駒15枚をみると、玉将が3枚あり王将はありませんでした。
チェスのように、キング(王)、ルーク(戦車)、ナイト(騎士)と戦いにまつわる駒が多いのに対して、
将棋は「玉」(宝玉)、金、銀、桂(高価な香辛料の肉桂)、香(宝物の一種の香木)と、宝物を表します。
将棋は、戦いのゲームと思われがちですが、自分の宝物を相手と交換したり、活用したりしながら、一番光り輝く相手の玉(宝玉)を取りに行くゲームとも言えます。
「しょうぎのくにのだいぼうけん」(講談社)の絵本にもこの考え方がベースにあります。
宝物の観点からも「玉将」が先に考案されていたのです。
なぜ「王将」が誕生したのか?
ではなぜその後、「王将」が誕生し2種類となり、王将を目上の人が持つようになったのか?
南北朝時代、天に二君なしということで、区別されるようになったのでは、と言われていますが、詳しいことはまだまだ謎のようです。
江戸後期の文献には「目上の人には王を与へ」と書かれているので、この頃までには将棋の作法として定着していたと考えられています。
駒一つとってもこのような歴史的背景や上位者を敬う文化が根付いています。
単なるゲームではなく、日本伝統文化としての将棋を子どもたちに感じてもらえたら、と思っています。
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