将棋を教える 2016年2月21日
愛情と厳しさと〜中倉家対談【中編】
お待たせしました、中倉家対談の中編です。前編をまだお読みでない方は、前編からどうぞ!
彰子:中倉家の修行といえば何を思い出す?
中倉宏美女流二段(以下宏美さん):詰将棋かな。家の柱に貼ってあったよね。それが印象深い。
父:あんまり覚えてないな。
宏美さん:最終的には十何手詰めまでいってたよね。
彰子:お父さん帰ってくるまでやらないといけなかったよね
宏美さん:歯医者に行くときも、あ、詰将棋持っていかなきゃ。待合室で詰将棋やる、って言ってた気がする。
父:二人だったから続けてこられたよね。よく二人ともできたよねって言われたけど、二人だからよかった。あとね、お母さんが、やめなさいっておさえるほうだったよね。今振り返ると、それがうまく作用していたよね。夜遅くまで将棋を指していると、お母さんがもうやめなさいって。
彰子:へ〜。
父:うちは、けんかが多かったよ。それが結果的に良かったのかなと。人間って我慢するとストレスが溜まるでしょ。それが我が家にはなかった。けっこう言いたいこと言ってたでしょ(笑)。
彰子:そーかなー。
宏美さん:最終的にはかなわなかったよ。私、早く独立したかったくらいだもん(笑)。
彰子:独立運動(笑)。
彰子:私も自分の娘とけんかすることあって、エスカレートしちゃって、言いすぎたなーって思ったことあるけど、お父さんもあった?
父:言いすぎたこともあったかな。途中からプロになれるかなと思った。最初は遊び半分だったから。もしかしたら、なれるかもと思って、それから、生きがいになってしまったかもね。今思うと厳しかったかな、と思うこともある。
宏美さん:えー厳しいなんてお父さんの口からでるなんて。初めて聞いたよ。
父:お母さんの存在が大きかったかね。適切に抑えてくれたからね。
宏美さん:辞めることは許されてない感じがしたよ。プロになってから、ようやく将棋をやっててよかったと思った。プロになる前は、意地だね。
彰子:お父さんは夢中になってしまうものね。
父:そうだね。
宏美さん:マラソンの高橋尚子さんと小出監督の「褒めて育てる」はうらやましかった。
父:厳しくて強くなるってこともあるよ。
宏美さん:将棋って楽しいというより怒られることも多かったから複雑な気持ちを持ってた時もあったかな。
父:今は褒めてやるってほうがいいかもしれない。
宏美さん:褒めてくれたのは、勝った時くらいだったよね。勝ったときは楽しかったな。
彰子:姉妹で褒め合うってことをしてたね。今でもしてるか(笑)。
父:私の時は厳しく教えて無理していることもあったかもな。彰子のところは子どもたちに教えてないのか?
彰子:教えてるけど、そこまで無理にって感じではないかな。
父:まあ、サラリーマンだから。(スタッフの方を見て)会社行って帰って、サラリーマンには毎日楽しみなんて、そんなにないですよね?
姉妹:(爆笑)
父:だから、教えることに夢中になるっていうかね。それが生きがいだったね。私も楽しんでいたから、続けられたというのはあるだろうね。もちろん、愛情がないとここまで続けられないけど。
彰子:1日おきに道場に行ってたもんね。道場行くたびに、対局を再現しないといけなくって。
宏美さん:初段もないときに、負けた将棋をお父さんに再現するのは難しかった。
彰子:怒られると思って、悪手を隠そうと途中創作してたら有利になりすぎて、どうしても負けに持っていけなくなったりとかね(笑)。
スタッフ:おふたりはどうしてプロになるまで続けられたんでしょうか?
宏美さん:うーん後に引けないっていうか。
父:そうだよな。もうここまでやったんだからな。
宏美さん:うーん、でもお父さんの無言の圧力もあったよね。
彰子:(爆笑)
父:なるべくそれださないようにしてたけど、バレてたか。
宏美さん:新聞にのったり、学校で表彰されたりとかがあったからかな〜。勝つのは楽しかったね。大会で優勝とか嬉しかったね〜。
彰子:あとは、さっきも話したお父さんの創意工夫だよね。
宏美さん:アイデアは面白かったかもね。ひな壇かざりとかね。お金かからずに、しかも作業が進むってすごいアイデアだよね。私たちって素直だよね。「これでひな壇かざれるー」って喜んでる無邪気さがあったよ。本当にいろんな工夫があったもんね。リーグ戦とか、ダービー戦とかね。
父:二人いるってのが良い効果をもたらしてくれていたんだろうね。
彰子:大人になってからも、駒落ちで私たちと対局することもあったよね。
父:どのくらい強くなったかって成長がわかるからね。
姉妹:(笑)
父:私が勝つ時もあるけど、彰子はすごくくやしそうな顔するよね。性格がでてるなって思う。別に遊びなんだからと思うんだけども。
父:勉強でもいいし、将棋でもいいし、何か好きなことがあって、その分野で誰にも負けないというのをひとつでいいから身につけて欲しかった。
彰子:将棋を指していなかったら、日本の伝統文化にも興味持ってなかっただろうし、将棋のお蔭で視野が広がったという気持ちはあるよ。
父:果たして良かったのかなと、苦労している姿を見て、お母さんとも話したことがあった。
宏美さん:お姉ちゃんは、大学行ったりとしてたもんね。
父:人生に正解はないからね。将棋やって良かったって言ってもらえると救われる。
宏美さん:今なら言えるかなー。得難い経験をさせてもらったしね。若いうちからいろんな人に会うことができたし、映画になったり、芸能人に会ったりとかねぇ。これも将棋やっていたからからだよ。
父:選ぶって難しい。何が自分の能力にあっているかってみつけるのは大変だとも思うよ。
彰子:今はどう? 今の立場としては?
父:社会人となっても心配は心配だよね。
宏美さん:心配じゃないときはないんじゃない?(笑)
父:星取表は必ず見ているよ。
彰子:父の心配は、これからも続く(笑)。
宏美さん:あ、お父さんは、彰子の会社大丈夫か?とか聞いてくるよ。
彰子:私には宏美、代表大丈夫かとか聞いてくるよ(笑)。
【後編】へ続きます!
中倉姉妹もたくさん解いた詰将棋をやってみたい方にはこちらがおすすめです( ´∀`)
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