株式会社いつつ

連載:全国将棋道場巡り 2016年9月20日

初・二段からの棋力アップに注力〜北浦和将棋サロン〜

中倉 彰子

埼玉県にある北浦和将棋サロンに行ってきました。

前身である「大宮将棋センター」時代を合わせると、これまでに何人もプロ棋士を輩出してきた同センター。近年の卒業生では高野智史四段や女流棋士の和田あきさんがいます。今回は、同サロンの席主であり、ご自身もかつてアマ強豪としてご活躍されていた小島一宏さん(以下小島さん)と小島さんとともに教室を運営される奥様にお話をお伺いしました。

北浦和将棋サロン席主の小島さん
北浦和将棋サロン席主の小島さん

大宮将棋センターから北浦和将棋サロンへ

中倉彰子(以下彰子):「大宮将棋センターから北浦和将棋サロン移転されたきっかけ何ですか?」

小島さん:「今年の3月中旬に移転したのですが、子どもの環境を配慮しました。元の所在地の方が駅からのアクセスは良かったのですが、歓楽街のような場所だったので。一方こちらは最寄りの駅からは少し離れていますが、周りには小学校や美術館、公園もあって、緑に囲まれているので子どもにはいいかなと思いました。」

彰子:「もともと子どもたちの指導に興味があったのですか?」

小島さん:「いいえ。特に私がアマ強豪だった時は自分が強くなることしか考えていませんでした、笑。私が子どもたちの将棋の指導について考えるようになったのは日本将棋連盟埼玉県連のメンバーに就任したことがきっかけです。そこで小学生の大会運営などに携わるうちに、これまで隣で子どもが将棋を指していても気にとめなかったのですが、だんだん気になるようになりまして。」

初・二段の子どもたちが集まるドラの穴教室

彰子:「小島さんが代表に就任してからもう長いと思うのですが、北浦和将棋センターの取り組みで力を入れていることはなんですか?」

小島さん:「長いと言ってもまだまだ10年弱ですが、しかしその間にも色んな取り組みをしてきました。そのうちの一つがドラの穴教室です。立ち上げは代表就任前の2004年になるのですが、私が取り組んだ中では、一番反響があったと思います。ドラの穴教室とは、初級者教室と道場の間の実力を持つ子どもたち(大人の方もいますが)を対象にしたコースです。大体初段二段の方が中心ですね。」

彰子:「なぜドラの穴を始めようと思ったのですか?」

小島さん:「初心者向けの将棋教室や道場はいっぱいあるのですが、実はこの2つには結構棋力の差があるんですね。しかし、残念なことにその差を埋めるような将棋教室というのがなかなかありません。そのため、初心者コースを卒業したばかりの子どもは行き場を失ってしまうということがよくあります。そこで、立ち上げたのがドラの穴教室です。立ち上げ時はあえてトップクラスの実力を持つ子どもたちには声をかけず、3番手くらいの子どもたちを数名集めてそこから始めました。」

彰子:「確かに初段・二段に限定したコースというのはとても珍しいように思います。」

小島さん:「はい。そのため現在の登録者は約90人ほどいますが、東日本エリアの様々な県から子どもたちがやってきます。遠いところだと宮城県、今多いのが茨城県です。少し棋力が上がって、地元だけ物足りないという子どもたちの受け皿になっています。」

彰子:「それにしても『ドラの穴』というのは、面白いネーミングですね。どんな由来があるのですか?」

小島さん:「まずは私がドラえもんと呼ばれていることが1つ。そしてもう1つはタイガーマスクのトラの穴という悪役レスラーを養成する機関の名前からきています。悪役のちびっこ棋士を育成しようという訳ではありませんよ、笑。タイガーマスクの主人公が最初トラの穴で訓練を積んでいたのですが、ここの練習がとても厳しくて。将棋でも強くなろうと思ったら、厳しい練習もしないといけないという意味を込めてこの名前をつけました。」

ドラの穴のドラはドラえもんから。
ドラの穴のドラはドラえもんから。

指導者の役割は個人にあったアドバイスをすること

彰子:「では、小島代表の指導方針も厳しい感じですか?」

小島さん:「いえいえ。そんなことはありませんよ。詰将棋を解きなさいと口酸っぱくいいますが。基本的に将棋が上達するのかどうかは、指導者によるところというよりも本人の熱意次第だと思います。私たち指導者ができることといえば、子どもたちの棋力を見てその子にあった課題を与えること、そしてアドバイスをすることくらいです。例えば、この本を読むといいよとか、詰将棋の問題集を20分で解いてみてくださいとかですね。」

彰子:「コーチみたいな感じなんですね。ちなみに私も初心者向けの将棋教室をやっているのですが、みんな小学校低学年までで、高学年になると将棋から塾に切りかわってしまいます。北浦和将棋サロンでは、前身の大宮将棋センターだった頃も含めて、大人になっても将棋の世界でご活躍されている方が多い印象ですが、みんな継続して将棋を指しているのですか?」

小島さん:「人それぞれといったところでしょうか。塾に行くというタイミングもありますが、中学校で部活を始めてなかなか来る機会がないという子どもたちも多かったと思います。ただ、将棋をしていることが勉強とどう結びつくのか私には説明することはできないのですが、大宮将棋センターの出身者は比較的優秀な子どもたちが多い気がします。たまたまかもしれませんが、東京大学の将棋部にはうちのOBが数人いるんですよ。」

個人の棋力に合わせて、詰将棋の制限時間を設定したり、オススメの書籍を選ぶなど、コーチのような小島さん。
個人の棋力に合わせて、詰将棋の制限時間を設定したり、オススメの書籍を選ぶなど、コーチのような小島さん。

編集後記

小島さんは長年将棋普及にご尽力されている方で、私も小さな頃からよく存じ上げていました。アマ強豪時代は特に埼玉県を中心に活躍されており、「第11回読売日本一」優勝と将棋の実力もさることながら、その後の後進の育成、とくに子どもたちへの普及活動については私も学ぶべきところがたくさんあります。

奥様も将棋がお好きなようで、小島さんと二人三脚で道場を盛り上げてきたのだなーと感じました。(毎年お二人のツーショットの年賀状が届くもので♪ふふふ)素敵なご夫婦です♪ドラの穴の子どもたちの活躍を自分のことのように嬉しくお話をされるお二人の姿がとても印象的でした。
これからも「ドラの穴」の卒業生の活躍に期待したいですね(^ ^)

ご夫婦で仲睦まじく将棋教室を運営されています。
ご夫婦で仲睦まじく将棋教室を運営されています。

道場データ

道場名称 北浦和将棋サロン
場所 さいたま市中央区大戸4-26-11
ヴァンべール与野2階(よしたに動物病院の上)
営業時間 11:00〜20:00
定休日 毎週水・土曜日
土曜日は教室と例会のみ開催
水曜日が祝日の場合は営業

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この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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