連載:神戸新聞「随想」 2017年6月28日
「銀」は千鳥につかえ
先日、2020年東京オリンピックのメダルが、100%リサイクル金属で制作されることが報道され、話題になれました。「リサイクル」といえば、日本将棋にも「持ち駒の再利用」といういわばリサイクルのルールが存在します。
実は、西洋のチェス中国のシャンチー、タイのマークルックなど世界のボードゲームは、いずれも将棋と同じインドのチャトランガを起源に持ちます。しかし、世界広しといえども、「持ち駒再利用」のルールを使うのはただ一つ、日本の将棋だけ。今回のメダルも「日本らしいメダル」として世界に伝えることができればと思います。
また、この報道で知った話なのですが、実は金メダルは、100%純金というわけではなく、95%くらいは銀でできているそうです。残り約5%の金でコーディングされた銀は、まさにオリンピックで隠れた主役なのですね。
ちなみに、将棋でも銀は隠れた主役であるといえます。例えば、玉の守りの主役の駒といえば金ですが、その金2枚を連結させて強くするのが銀の役目です。また、攻めの主役である飛車角で、相手陣を突破するには、銀がガリゴリと前に進まなくてはなりません。
さらに、銀には、斜め前後に動けるという特徴があります。前に進むときは斜めに前に出て、何かあったら、斜め後ろに下がるというフットワークの軽さが相手陣を攻める上で、大きな強みとなります。銀のこの長所を捉えて、「銀は千鳥に使え」といった格言もあるほどです。
さて、今宵も気づけばもうこんな時間。先ほど「銀は千鳥に使え」と言いましたが、先日から始まったプレミアムな「金」曜日に、ほろ酔い気分のお父さんたちが「千鳥」足になってしまわないようご用心。
この記事は、神戸新聞「随想」にて、中倉彰子が寄稿したものと同じ内容のものを掲載しております。
:『神戸新聞』2017年3月9日 夕刊
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