株式会社いつつ

連載:神戸新聞「随想」 2017年5月19日

「飛」躍の2017年

中倉 彰子

2017年酉年。鳥といえば職業柄私はどうしても「飛車」の駒を思い出してしまいます。なぜなら、鳥は「飛ぶ」生き物だからです。昔の人も自由に空を飛ぶことに憧れていたのでしょう。

さて先日、明石市で親子向けの将棋イベントを開催しました。基本的なルールの解説やクイズ、簡単なゲームなどのコンテンツで構成されるのですが、盛りだくさんな企画の中でも、特に目玉となるのが「ホンモノ体験」のプログラムです。ホンモノ体験とは、会社で所有する、第74期名人戦第3局で当時名人だっった羽生善治王位と佐藤天彦現名人が実際に対局を行った盤駒を、子どもたちに使ってもらおうという企画です。プロ棋士の礼儀作法の話、日本の伝統工芸品として職人さんが丹精込めて作った話をしたからでしょうか、道具を粗末に扱う子は一人もなく、ちょっと緊張した面持ちで、ちょこんと正座し、一手指してから、きちんと頭を下げて、後ろの人と交代していきます。「ホンモノ」の日本伝統文化に触れた経験を、子どもたちなりに活かしてもらえたら、嬉しなと思います。

ホンモノ体験を通じて、子どもたちが何かを得ることができれば、とても嬉しく思います。
ホンモノ体験を通じて、子どもたちが何かを得ることができれば、とても嬉しく思います。

話が戻りますが、冒頭で触れた飛車は、成る(将棋用語で相手の陣地に入り裏返る)ことで「龍」になります。子どもたちもこの先盤上の飛車みたいに人生という大空を自由に飛び回り、いつの日か、龍のように大きく、そして強く成長してほしいなと思います。

さて、せっかくの酉年なので、2017年は私にとっても、飛躍の1年にしたいものです。あ、そういえば、酉年の鳥はニワトリなので飛べない鳥でした。(笑)

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この記事は、神戸新聞「随想」にて、中倉彰子が寄稿したものと同じ内容のものを掲載しております。
:『神戸新聞』2017年1月23日 夕刊

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この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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