将棋を学ぶ 2018年7月26日
駒落ち攻略虎の巻〜10枚落ち〜
駒落ちとは、将棋の対局におけるハンデキャップ。二人の対局者のうち棋力の高い方が、両者の棋力差に応じて自分の駒を落とします。棋力差が大きければ大きいほどたくさんの駒を落とします。
駒落ちでの対局は、棋力の差のある対局者同士でもギリギリの勝負となり対局自体を面白く行うこともできますし、初心者に将棋を教える時に役立ちします。将棋の学習という側面においても、とても効果的です。
そこで、いつつブログでは、それぞれの駒落ちのパターンにおける達成目標を、駒落ち攻略虎の巻としてまとめました。
達成目標を意識しながら指すと、学習した内容も身につきやすいですよね。
10枚落ち虎の巻
さて今回学習する駒落ちは、「10枚落ち」です。前回の「歩なしの10枚落ち」と比較すると、お互いの最前線に9枚の歩が立ち塞がっているのですが、歩の下に控える駒を活躍させるためにも、いかに効果的に、これらの歩を前に進めていくのかが、10枚落ちを攻略する上での重要なポイントになります。
10枚落ちの目標
角道/飛車先の歩をつく
玉のいない場所から敵陣を突破する
さて、前回の「歩なしの10枚落ち」でも学習したことですが、相手の王様を捕まえるには、何より大駒を成ることが大切です。
ただ、前回の「歩なしの10枚落ち」では、初手からいきなり成ることができましたが、「10枚落ち」ではそうもいきませんよね。先ほども少しヒントを出しましたが、10枚落ちで成るには、ちょっとした準備が必要になります。
角道をつく(角道をあける)
自分の駒が全て揃っている将棋の場合、「7六歩」もしくは「2六歩(居飛車戦法の場合)」と指すのが初手のセオリーとされています。
それでは、なぜこのように指すのかというと、先に申し上げた「成るための準備」とは即ち、「敵陣に自分の駒の利きを届かせる」ことであるからです。
例えば、初手「7六歩」と指すとどうでしょうか。自陣の角の利きをいきなり敵陣まで届かせることができますよね。このように、角の利きの動線上にある駒を移動させることで、自分の角の利きを敵陣まで届かせることを、将棋用語で「角道をあける」と言います。
また、将棋の言葉に「遠見の角」という言葉がありますが、離れた位置から、相手の敵陣に角の利きを届けることができれば、成るための準備が整うだけでなく、まるでスナイパーのごとく、遠くから獲物を狙うこともできるので、相手にとっての脅威になることができます。
ちなみに、余談ですが、将棋初心者の子どもたちの場合、自分の角の利きを敵陣に届かすことはできるのですが、どういうわけか、敵側のスナイパーの存在は見落としがちです。
10枚落ちでは、もともと上手に角がないので滅多に起こりませんが、初心者同士の平手対局の場合は、十分気をつけるようにしましょう。
飛車先の歩をつく
さて続いては、「2六歩」の手についてです。
「7六歩」が角を成るための準備ならば、「2六歩」は飛を成るための準備にあたります。
前述にもあるように、「成るための準備」とは即ち、「敵陣に自分の駒の利きを届かせる」ことなのですが、飛の利きを敵陣に届けるには、角の利きを届けるより少し根気が必要になります。
それでは、「2六歩」の続きからみてみましょう。
飛は、縦横まっすぐにしか進めませんので、自分の飛の利きを相手に届かせるには、そのまま2五歩、2四歩と自分の歩を前進させるしかありません。しかしながら、皆さん既にお気づきかと思うのですが、2四の地点までたどり着くと、必然的に相手の歩と鉢合わせになってしまい、このままでは、相手の歩に自分の歩が取られてしまいます。
この自分の歩を取られてしまうかもしれない危機は、どうやら子どもたちも察知できるようで、多くの初心者の子どもたちが、2五の地点で歩の前進を止めてしまうのですが、ここでは、自分の歩が取られてしまうことを恐れず、2四歩と一歩前に踏み出す勇気が必要になります。
以前いつつのブログで、将棋初心者の子どもたちのつまづきポイントとして、駒の交換を挙げさせていただきました。詳しい解説は、そちらのブログを参考にしていただければと思うのですが、簡単に解説すると、仮に相手の2三の歩に、同歩と自分の歩が取られたとしても歩の下に控える飛車で相手の歩をとり返すことができます。
結果としては、相手が歩1枚、自分も歩1枚の交換になるので、決して損をすることはありません。むしろ、自分の飛の前に立ち塞がっていた歩がなくなることで、飛の利きを敵陣に届けることができるので、飛車が成るための準備が整い、非常に良い状況であると言えます。
このように、飛車を成るために飛車の前にある歩をどんどん前進させることを、将棋では「飛車先の歩をつく」といいます。
ちなみに、今回の事例では、2筋の飛車の先をついてますが、振り飛車を戦法を使う場合は、飛を振った位置から、飛車先をつくこともできます。
玉のいない場所から敵陣を突破する
さて、飛車先の歩をついて、飛車先の歩の交換が済んだら、そのまま敵陣を突破して、飛を龍に変身!といきたいところなのですが、そう簡単にはいきません。
なぜなら、上手側も大駒に成られることを警戒して、4二玉、3二玉と守っているからです。このまま2三飛車成としてしまうと、せっかく成ったにもかかわらず、あっさりと相手玉に自分の飛が取られてしまいますね。
そこで、相手の駒の近くにいると危ないので、一旦飛車を安全地帯(相手の駒の利きが届かないマス)まで引きます(将棋用語では、下がることを「引く」と表現します。)今回の事例の場合、安全地帯は将棋盤の中段になります(ちなみに、自分の飛を中断で構えることを浮き飛車と言います)。
さて、一旦退きはしたものの、大駒を成るには敵陣を突破するしか方法はありません。ここで、一度想像していただきたいのですが、もし皆さんが敵陣を突破するならどの部分を狙いますか?もちろん、1番守りが薄いところですよね。
10枚落ちの場合、相手の駒で特に気を付けなくてはいけないのは、玉です。つまり、玉から離れた場所が、1番守りが薄いところ、そう相手の弱点!ということになります。
今回の事例の場合だと、上手側の玉は4二玉、3二玉と向かって右側に上がってくるので、真ん中より左の6〜9筋から突破するのが狙い目ですね。
さらに強くなるために
さて、「角道をあける」「飛車先の歩をつく」「玉のいない場所から敵陣を突破する」の3点ができていれば、10枚落ちは合格なのですが、さらに棋力をつけるためにも、余力があれば3三の地点を狙って数の攻めをする」ということも意識してみましょう。
「玉のいない場所から敵陣を突破する」のところでもお話ししましたが、上手側の玉は、基本的には初期配置の位置から、4二玉と上がってきます。
先ほどは、ここで飛車先をついて、歩の交換を行い、玉のいない場所からの敵陣突破を狙いましたが、今度は、飛車先の歩の交換の後、あえて玉と同じ3筋で飛を構えるという方法を説明しますね。飛の利きはもちろん、最初に角道をあけていたことで、飛と同時に角がダブルで3三のマスに利いていますよね。そこがポイントです!
3三のマスに対して自分の駒の利きは飛・角の2枚、一方上手側はというと玉1枚です。
このように、ある地点に対しての、自分の駒の利きの数を、相手の駒の利きの数よりも多くすることを数の攻めと言います。数の攻めに成功すれば、事例のように☗3三角成と、狙った地点を突破することができます。
10枚落ちのおさらい
- 角道をあける
- 飛車先の歩をつく
- 玉のいない場所から敵陣の突破をする
- 数の攻め
ここまでできれば完璧ですね!相手の玉の捕まえ方については、「歩なしの10枚落ち」を復習してみてください。
次回の駒落ち攻略虎の巻では、9枚落ちの虎の巻についてお話ししたいと思います。
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