将棋を学ぶ 2019年1月11日
駒落ち攻略虎の巻〜番外編トンボ(居飛車)〜
それぞれの駒落ちのパターンにおける学習のポイントと達成目標を分かりやすく解説する駒落ち攻略虎の巻シリーズ。今回は、番外編としてトンボについて解説します。トンボは、上手側に歩と飛・角が残った手合いのことを指します。駒の配置がトンボの形に似ていることからこう呼ばれるようになりました。
実はこのトンボ、将棋初心者の子どもたちが講師にまともに勝とうとすると少し難しい手合いになります。講師が飛・角2枚の大駒を持っていますからね。ちなみに、いつつ将棋教室でも、このトンボを攻略するのが難しくみんなが苦戦することから、元町校では「地獄のトンボ」なんて呼ばれているようです、笑 。
では、なぜいつつではあえてこの段階でトンボを初心者の子どもたちに採用しているのかというと、トンボで身に付ける技術が、平手の実戦でも役立つからです。
将棋大会などに出場するようになると、レベル別でトーナメントが分かれているということはあっても、駒落ちで将棋を指すということはほぼありません。ですので、初心者の段階から、平手の指し方にも慣れてほしいという想いからです。
また大駒があるので序盤中盤を基本通り進めていき、敵陣を突破すれば、玉のボディーガードである「金」がいないので寄せることはそれほど苦労はいりません。
それでは、トンボの駒落ち攻略のポイントについてまとめていますので、ぜひ参考にしてください!
ちなみに、今回は居飛車戦法での虎の巻について詳しく解説しています
★過去の「駒落ち攻略虎の巻」を見る★
トンボ虎の巻(居飛車)
前回の8枚落ちまでは、上手は基本的に「玉を守る」ことに徹していたので、下手は、相手の弱点を突いてそこから攻めるということを学びました。ただ今回学習するトンボでは、上手に大駒2枚、つまり攻めるための駒があるので下手はただ攻めるだけではなく、しっかりとした理想的な駒組みや守ることも身につけないといけません。。
トンボの目標(居飛車)
角の頭を守る
棒銀ができるようになる
飛車先からの敵陣突破
角の頭を守る
上手も攻めるための駒を持つトンボでは、上手が初手から△8四歩△8五歩と飛車先をのばし、下手の陣の突破を狙ってきます。そこで、上手の伸びてくる飛車先についてどのように対処するのかというと、初手▲2六歩のあと、▲7八金と金を上がって守ります。
この手の狙いは、上手の飛の攻撃から自陣の角を守ることです。角は斜め方向にはいくらでも動けますが、頭が弱点なのです。このことを将棋教室の子どもたちに「角の頭はカッパのお皿だよ」と伝えています。(カッパは頭のお皿が弱点、と記憶しているのもので・・。)▲7八金と金をあがっておくことで、角の頭の▲87の地点を守ることを覚えましょう。「数の攻め」はこれまでも伝えてきましたが、これは相手の数の攻めに対して、自分の駒の利きを足して受ける方法になります。
それでは、▲7八金と上がった後の動きについて詳しくみてみましょう。
上手は△8六歩と飛車先の歩をつきます。これは▲同歩と取ります。これは講師にとっては当たり前のように思いますが、これがけっこう、この歩を取れない子が多いものです。聞いてみると「歩を取っても相手の飛車に取り返されてしまうから。」というものです。ですので、ここで歩を取らないと、相手の歩が成ってきて自分の陣地に攻めてくる、ということを伝えます。その後、△8六同飛と8筋の飛車が近づいてきます。ここで大事なのが、▲8七歩と歩を打って受けることです。この▲8七歩が打てない子も多いものです。
この一連のやり取りは、平手戦の相居飛車ではとても良く出てくる形です。ここで相手の歩が成られてしまって負けてしまうパターンが初心者には多いので、このトンボでは、この形を丸覚えしてもらいます。87のマスを受けるだけなら、▲7八銀でもいいです。ただ平手戦の場合は、▲7八金で受けるのが「形」なので、ここでしっかりと身につけておきましょう。
このあたりの受け方は、はじめての将棋手引帖4巻の100日目にも詳しく解説しています。
棒銀を使って攻める
さて、前章では相手の飛車先の攻撃からどのように自陣の角を守るのかについてお話しさせていただいましたが、守ってるだけでは勝つことができませんよね。将棋で勝つには、守ると同時に攻めなくてはいけません。
ここで、前回の8枚落ちの攻略を少し思い出してほしいのですが、8枚落ちの虎の巻では、香を使って相手の弱手の端を狙って攻めていきました。今回は、相手にも大駒があるので端攻めはあまり得策ではありません。ここでは、平手戦でも活かせる理想的な駒組みを目指していきます。(はじめての将棋手引帖3巻81日目に駒組みの理想形を扱っています。)
駒組みの理想形としては、銀を5段目まで進めます。まずは、▲3八銀と指して、その後▲2七銀〜▲2六銀〜▲3五銀と一気に五段めまで進みます。このように、序盤に銀を五段目まで進出させる戦法を「棒銀」と呼びます。棒銀は最初に覚えてほしい攻め方です。ここは下手も飛車先の歩を交換したいところなのですが、上手が△8四飛と浮き飛車にして、四段目に斜めのビームを利かせているので、▲2四歩とついて「飛車先の歩の交換」(はじめての将棋手引帖4巻95日目)を試みても失敗してしまいます。
ここでは、▲2七銀〜▲2六銀〜▲3五銀という銀の進出の仕方をしていますが、もし「飛車先の歩の交換」ができるようであれば、▲2七銀〜▲2六銀〜▲2五銀と上がる方法もあります。理想型へ組む手順ですが、今は、細かい意味や理屈よりも、銀を5段目に上がって攻める形が「良い形」として認識してもらえたらと思います。この「棒銀」の形は実戦でも必ずと言っていいほど登場するので、初心者の子どもたちにもぜひ身につけてもらいたいと思います。
ちなみに、下手が棒銀で敵陣突破のための準備をしている頃、上手も「飛がダメなら角で」と言わんばかりに、△1四歩、△1三角と今度は角で、スナイパーのように相手陣地へ成る手を狙ってきます。トンボの攻略で難しいことの一つには、相手の大駒の利きをうっかりしやすいことです。(8枚落や6枚落だと相手の駒が金・銀なので、相手の駒の利きが飛んでくることがありませんね。)この手には▲6八玉をしっかり受けておきましょう。
数の攻めで敵陣突破
銀を5段目まであげて「駒組みの理想形」に成功したら、敵陣を攻めるための準備は万端。ここまで、来れば下手も、セオリー通り飛車先からの敵陣突破を目指しましょう。▲2四歩とつけば、敵陣の最前線である2三のマスに利いている駒が、上手が玉1枚なのに対しこちらは歩と飛車の2枚なので、▲2四歩△同歩▲同銀△4二玉▲2三銀成と数の攻めで無事に敵陣を突破することができます。
ここまでこれば、後は△3一角▲3三成銀△5二玉▲2一飛成△1三角▲3二龍△6一玉▲4三成銀△7一玉、▲3三角成・・・・と上手の玉を追いつめていきます。ここまでくれば上手の駒には、金や銀といった守りの駒がいないので、比較的つかまりやすいと思います。
さて、今回のいつつブログでは、トンボ攻略の中でも居飛車のパターンの攻略法について解説しました。トンボはガチンコ勝負だと下手はなかなか勝つことが難しい手合です。それは、相手に飛・角という動きが大きい駒を持っているので、それだけ盤面を広く見る必要があるからです。
相手の駒の利きを意識するのは、初心者にはハードルがあるものなのですよね。上手に比較的有利な手合いでもあるのですが、このあたりで、角の頭の守り方・棒銀といういった平手戦の基礎をしっかり身につけてほしいという気持ちで指導をしています。もちろん子どもたちに自力で勝ち切ってほしいのですが、今回あげたポイントがきちんとできているのか、という点を見てあげると良いと思います。
それでは、次回は振り飛車でのトンボ攻略虎の巻について詳しく解説させて頂きますので、「振り飛車党です!」という方は、乞うご期待です
トンボ攻略のポイントであり、平手の実戦でも役立つ「棒銀」については、「はじめての将棋手引帖3巻」でも詳しく解説しています。
将棋のほん
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1,650円(税込)
商品番号:126775972
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