株式会社いつつ

連載:全国将棋道場巡り 2017年1月25日

教員免許を持つ若手席主が神戸に将棋教室をオープン〜摩耶将棋倶楽部〜

中倉 彰子

女流棋士の中倉彰子(以下彰子)が、全国津々浦々、さまざまな将棋道場・将棋教室を訪ねてまわる「全国将棋道場巡り」。記念すべき第10回目となる今回は、いつつの活動拠点でもある神戸市に昨年12月に設立されたばかりの摩耶将棋倶楽部にやってきました。

席主を務める中田憲宏さん(以下中田さん)は、教室同様に大変お若くフレッシュなのですが、特に教育の分野に強い関心を寄せ、大学卒業時には小学校(正しくは高等学校地理歴史でした。訂正してお詫びいたします)教員免許を取得しました。

今回のインタビューでは将棋指導の新星・中田さんが思い描く、将棋普及の今後のビジョンについて詳しくお話いただきました。

中田憲宏さん
中田憲宏さん

教育の学習を生かした将棋教室を目指して

彰子:「摩耶将棋倶楽部はいつオープンされたのですか?」

中田さん:「昨年の12月17日です」

彰子:「オープンのきっかけは何ですか?」

中田さん:「大学卒業後に一般企業に就職し、営業職として長崎県で勤務していたのですが、関西に戻れることになり、それをきっかけに自分の好きなことをやってみたいと思いました。私の好きなことといえば将棋と教育だったので、その二つを掛け合わせて将棋教室を開校することになりました。あと、最寄駅でもあるJR神戸線の摩耶駅が綺麗に整備されたことも1つのきっかけと言えるでしょうか。」

彰子:「子どもと将棋が好きなんですね(^ ^)将棋はどれくらいやられていたんですか?」

中田さん:「私が将棋をはじめたのは小学校6年生の頃と、遅めでした。その後、中・高・大と将棋部に所属し、ずっと将棋を続けてきました。」

彰子:「立命館大学の将棋部ですよね。立命館大学将棋部といえば、女流の香川愛生さんや北村桂香さんも在籍している名門ですよね。」

中田さん:「実のところ私が大学生の頃は、将棋よりも教育実習や劇団など学外活動が中心でした、笑」

いろんな側面で支えてくれた恩師の存在

彰子:「そうなんですね、笑。一般企業の営業職から将棋教室の席主となると、全く違う職種への転身なのですごく大変そうなイメージがあるのですが、苦労された点も多かったのではないでしょうか?」

中田さん:「開校前に恩師でもある芦屋市こども将棋教室の田畑壽修先生の元で1年ほど修行しました。子どもたちへの将棋の指導の仕方や、教室運営の段取りについてなどを教えてもらいました。」

彰子:「将棋の棋力を上げるうえでもそうですが、恩師の存在というのはとても大きですよね。中田さんも田畑先生から色んなことを学んだことかと思います。」

中田さん:「はい。学んだこともそうですが、先生のおかげで様々な人との繋がりが生まれ、それが私や摩耶将棋倶楽部にとって大きな財産になっています。例えば、昨年12月17日の教室オープンの日に、山崎隆之八段に指導対局をしてもらったのですが、これも田畑先生の取り次ぎのおかげで実現できました。私は山崎八段の将棋が好きで、指導対局の時はぜひお願いしたいという話を先生としていたんです。他にも、摩耶将棋倶楽部では、将棋の道具にもこだわっていて、駒は全て熊澤良尊さんとそのお弟子さんがつくったものなんですが、良尊さんも先生に教えていただきました」

駒職人熊澤良尊さんも恩師からの紹介
駒職人熊澤良尊さんも恩師からの紹介

彰子:「確かに。道具はどれも綺麗だし、脚付き将棋盤などもあり充実していますね。駒も色んな書体のものがありとてもこだわりを感じます。」

中田さん:「4大書体とあとは良尊さんに選んでもらったものがあります。私は、良尊さんにこれらを選んでもらうまで、4大書体しか知らなかったのですが、こうやって将棋に携わる人の輪を広げていくことで、将棋についての知識も広がっていくんだなぁと実感しました」

若い力で将棋の魅力を伝えたい

彰子:「田畑先生の懐の深さもさることながら、会社員から修行期間を経て将棋教室をはじめたり、好きなプロ棋士を説得して指導対局をお願いするなど、中田さんの熱意と行動力もすごいと思います。今実際に将棋教室をはじめてみていかがですか?」

中田さん:「まだ始まったばかりなので、今のところは種を蒔いているような感じでしょうか。先日HPが完成し、来週にはチラシが出来上がる予定です。今は口コミなどで地元の人たちが通ってくれています。決してたくさん来ているとは言えませんが、その分マンツーマンでみっちり指導する時間が取れています。今後人数が増えてきたら、大盤解説や将棋大会などもやってみたいと思います。」

彰子:「HPを拝見しましたが、とてもしっかりしたものですよね。中田さんは、教室以外の場所でも将棋の指導をしているとお伺いしています。」

中田さん:「はい。私の母校でもある甲南小学校のアフタースクールというもので毎週月曜日に小学生向けに将棋の指導を行っています。現段階での教室外活動はアフタースクールのみですが、今後は、田畑先生の芦屋市こども将棋教室や、同じ神戸市内でも将棋人口が多いといわれる元町の将棋教室などとも積極的に交流したいと考えています。」

彰子:「将棋を広く普及させるという点において外部交流はとても有効だと思います。摩耶将棋倶楽部における将来的なビジョンなどはありますか」

中田さん:「私は将棋指導者の中では、かなり若い方になるのですが、自分自身も含めた若い力を集結して、それこそ子どもたちのようなさらに若い世代に向けて将棋の魅力を発信していけるような場所にしたいと思っています。例えば、将棋大会などだと、小学生は小学生大会に、中学生は中学生大会に参加することが多いですが、私としては、小学生や中学生がもっと一般むけの大会に参加してもいいのではないかと思います。ここでは、こうした小学生、中学生、高校生、大学生といった枠組みを取っ払い、例えば小学生と大学生が一緒に対局や将棋の研究をするなど、将棋を嗜む学生たちにとっての拠り所のような場所になればと考えています。」

彰子:「若い世代が将棋を楽しめる場所にするために、何か工夫していることはありますか」

中田さん:「既に行っていることとしては、平日は小学生向けにこの場所を開放しています。そして、今検討している今後の施策としては、自分以外にも学生アルバイトを雇って子どもの指導をしてもらったり、将棋に関する書籍を集めたライブラリーを作り本の貸し出しを行おうと思っています。学生にとってはたとえ本1冊でも高かったりしますので。」

学生のために図書館を設置
学生のために図書館を設置

彰子:「若い力を集め、若者の視点から将棋の魅力を発信するというのは中田さんだからできることなんだと思います。最後に、子どもたちに将棋を指導する際に何か心掛けていることはありますか」

中田さん:「将棋指導者としての経験はまだ浅いですが、教育実習などを通じてたくさんの子どもたちと触れ合う中で、子どもの気持ちを理解することが1番重要であるということを学びました。なので、頭ごなしに否定・批判するのではなく、まずは子どもたちの考えていることや言い分をちゃんと聞いてあげるよう心がけています。」

取材後記

いつつの近くに将棋道場ができた!といつつ内でも盛り上がっていたところ、ほどなくして中田さんから連絡いただきました。これは行くしかない!ということで、さっそく取材に。

教室の内装は、「シンプルに落ち着いて将棋に打ち込めるように」という中田さんのこだわりがある和のデザイン 。ブラインドや天井なども和のテイスト。木の匂いもあり落ち着いた雰囲気でとても素敵なところでした(^ ^)♪

教室は和を意識したインテリアで統一
教室は和を意識したインテリアで統一

閉鎖する道場も多い中、今若い人が若い観点で、女性や子どもたちが入りやすいサロンを誕生させています。「初心者でも安心」、お母さんとお子さんも通える。これから二つのニーズに合った将棋サロンが誕生していることを嬉しく思いました。

いつつも微力ながら、イベントやブログを通して、お母さん達に将棋に興味を持ってもらい、こういった将棋サロンに実際に足を運んでもらえるようになればいいなと思います(^ ^)

道場データ

道場名称 摩耶将棋倶楽部
場所 兵庫県神戸市灘区灘北通5-1-12
営業時間

(子供将棋教室)火〜金 13:00〜19:00 土日祝 11:00〜13:00

他にもいつつブログでは、様々な将棋道場を紹介しています。ご興味あれば、ぜひご一読ください(^ ^)


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この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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