連載:日本の伝統文化のいつつ星を探して 2015年10月19日
会津起上り小法師〜日本伝統文化のいつつ星を探して〜
「日本伝統文化のいつつ星を探して」と題して、「いつつ」のメンバーが全国に散らばるこだわりにこだわりぬいた日本の伝統文化をレポートします。
第1回目は、会津の伝統的な郷土玩具「起上り小法師」。会津で唯一伝統的な製法にこだわり、手作りの起上り小法師を製作している山田民芸工房さんを訪問してきました。
当時の領主公が、領民に起上り小法師を作らせ正月に売りだしたのがはじまりのようで、今でも、会津地方ではこの小法師を「十日市」という毎年1月10日に行なわれる初市で、家族の人数+1個を購入し一年間神棚などに飾る伝統があるとのことです。
山田民芸工房さんは、400年前から代々続いている伝統的な工房とのこと。お話を伺ったのは、山田さん。突然の訪問でしたが、快く作業場を案内してくれて、伝統的な作業工程のひとつひとつを丁寧にわかりやすく教えてくれました。
私が伺った時は、木型に和紙を張る工程をなさっているところでした。
見ていると、手際よく張っていらっしゃいます。伝統的な技法で、なんだか簡単そうにみえますが…、やらせていただくと、はい、当たり前ですが、難しいですね(笑)。
ふと気が付くと、コロンとした細い目の起上り小法師が、置いてありました。それらは機械で作られたものだそうで、おみやげ屋さんに並んでいるものの多くは機械で作られているとのことです。
「目は筆で描くのですか?」と尋ねると、「昔は、筆は高級品。竹を削ったもので描いていただんよ。だから、筆では描かない」なるほど。そういう理由で山田さんの作る起上り小法師は、すっとした細い目ではなく、ぽてっとした目になるのですね。こういったところにも長い伝統が息づいています。
山田さんは、「手作り」というこだわりの他にも、卸す先も、自分の目が行き届くところと決めているようでした。
とっても気さくな山田さん。
「私も昔は寄り道もしたけどね。でも、手作りで起上り小法師を作っているのはもうここしかないからね。」という言葉には、400年の伝統をつないでいく決意を、若いころにされたのだなーと思いました。簡単なことではなかったんだろうなと。
お店には、息子さんもいらっしゃいました。山田さんとお話をしていたときには、「ついでくれたら嬉しいけど、遊びたい気持ちもあるだろうし。」と控えめな発言でしたが、息子さんは、「目を任された時は嬉しかったですね。」と、この仕事の誇りとお父様への尊敬を感じました。
そんな次代の当主の前で、伝統的な絵をいれる作業を体験。日本国内、あちこちから修学旅行生も訪れるとか。
「七転び八起き」転んでも転んでも起き上がる「起上り小法師。」
何度転んでも、そこから何かを学び経験し、また起き上がることのできる子供になってほしいというのは、昔も今も変わらない(それこそ伝統的な)親の願いかと思います。
400年前の親御さんも、そんな気持ちを込めて、この小法師を眺めていたのかな、と思いを馳せながら、会津地方の伝統にならい、家族+1個の小法師をお土産に買いました。
<中倉彰子の訪問後記>
手作りなので、まったく同じものがありません。ちょっと大きさやバランスも微妙に違うし、顔も違います。
その違いが、選ぶ楽しさになりますね。6個買うときに、その違いを家族を思って、「これは長女に似てるかな」とか考えながら、選ぶのです。きっと全部同じだったら、選ぶ楽しみは少ないのかもしれません。違うからこそある個性ですね。
将棋にも棋風という言葉があります。棋風というのは、将棋の個性のようなもの。人によっては、攻めっけたっぷりの攻撃的な棋風、人によっては、とにかく相手の攻撃を防御する受けの棋風、さまざまな個性があり、それによって将棋の棋譜にも個性が生まれてきます。棋風というのはプロ棋士だけが持つものではなく、教室に通っている子どもさんひとりひとりにも感じることができるものです。子どもたちの「棋風」を最大限伸ばしてあげるような指導をしてあげたいと常々悩みつつ考えています。
子育ても、同じ。私には3人の子どもがいますが、ひとりひとりの個性をどうやって伸ばしてあげようか、日々母親として試行錯誤しています。ママの願いと子どもの興味が一致しなくてガックリすることもしばしばありますけど、これが我が子の個性なんだと思って受け入れようと、起上り小法師を見ながらママも七転び八起きの毎日です。
訪問先:http://www.aizukanko.com/souvenior/8/
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いつつのオンラインショップ神戸の将棋屋さんいつつにも、起き上がり小法師のようにかわいい将棋の雑貨があります。
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