将棋を学ぶ 2018年3月5日
将棋を通じて「待てる」子どもになろう
「ねぇねぇお母さん早く〜」「ご飯まだ〜」などなど。
好奇心旺盛で元気な盛りの子どもたちはとにかく「待つ」ということが苦手です。ママとしては、子どもたちにかまってあげたい気持ちはあるものの、毎日子育てに、人によっては仕事にと目の回るような忙しさの中で、子どもたちに対して「ちょっと待っててー!」と思う瞬間も少なくないのではないでしょうか。
私も3人の子を持つ母として、「どうにかして、待つということを覚えてくれないものか」と日々頭を悩ませています^_^;
ただ、将棋は、子どもたちが「待つ」ことを学ぶことができるように思います。
なぜなら、将棋では「待つ」ことも大事なことで、逆に待てなくてイライラすると、結局のところ良い手が指せないことにつながるからです。
将棋ほど「待つ」競技はない
将棋では、待たなければいけないという場面が非常に多いように思います。
例えば対局中、「あ!」といい手を思いついたとしても、相手が指し終わって自分の手番が回ってくるまでじっと待たないといけません。相手が早指しならともかく、長考の場合(プロ棋士どうしの対局だと1手指すのに1時間以上かかることもめずらしくありません。)子どもたちにとってはとてもじれったい時間になってしまいますよね。
また、講師による多面指しの指導対局もそうです。将棋教室や講師の先生の方針により何面同時に進行するかは異なりますが、講師が他の子どもたちと指しているときは、既に自分の駒を動かしていたとしても、順番が回ってくるまで待たなくてはいけません。
他にも、将棋は助言禁止なので、お友だちにアドバイスしたくても、対局が終わるまで待たないといけなかったり、すぐに対局をしたくても手合いが着くまで待たなくてはいけなかったり、とにかく将棋は待たなくてはいけません。
手持ち無沙汰にさせない
さて、少し話が逸れますが、待ちきれなくなった子どもたちがどうなるかというと、皆さん既にご存知かと思うのですが、漏れなく騒ぎ出します、笑。
子どもたちはエネルギーがありあまっているので、それはそれで仕方のないこととは思うのですが、やはり将棋教室や道場など他の人たちがいる場では集中して将棋に取り組んでもらいたいものです。
もちろん私の将棋教室でも、子どもたちに待ってもらう機会が多いので、多面指しの指導対局の際には「先生、ぼくもう指したよ〜早く次指して」と急かされたり、お友だちとの対局の時に、相手が指し終わるのを待ちきれず、相手が駒から手を離す前に自分の駒を動かしてしまいちょっとした揉め事になってしまうなんてこともあります。
そこで私自身、将棋教室で子どもたちに待ってもらうためにどうすればいいのか考えたことがあったのですが、その1つとして実際に実行しているのが「子どもたちを手持ち無沙汰にしない」です。
子どもたちが待てずにしびれを切らすのは、主に「何をするのか分からないまま待たされている」時です。なので、例えばお友だちどうしで対局をするときは「相手が指し終わるまで手はおひざ」というルールを定めることで、相手が長考している間も「手はひざの上において置く」ということに意識が向くようにしたり、手合いをつけるのに時間がかかってしまうときは、「しばらくこれやっててね」とサッと渡せるように、詰将棋のプリントを何種類か事前に準備するなど、できる限り子どもたちの手が空かないよう心がけています。
落ち着きのないお子さんへの対応についてはこちらの記事でも詳しく説明しています。
待つ時間は考える時間
ただ、子どもたちが待たなくていいような工夫をする一方で、待つことの大切さを教えるのも、将棋指導者の重要な役目であると考えています。
なぜなら、将棋で強くなるには待つことが必要不可欠だからです。もし、将棋道場や将棋大会で長考の相手と当たった時に待ちきれずイライラしてしまうと、集中力が途切れてしまい、相手が指したらすぐ指す!なんてことをしていたらいい結果には結びつきません。
例えば、私が多面指しで指導対局をする時は、「ぼく指したよ!」と毎回教えてくれる子もいます。本人としては教えてあげている気持ちと、「だからはやく先生も指してー。」という気持ちもあると思うのですが、そんなときは「将棋は待つのも大事なんだよ。」と教えてあげます。すると「へ〜そうなんだー。」という顔をしてくれます。そして、「ほんとにその手でいいかな?」や「相手は次にどう指してくるか考えておいて。」と問いかけをして、待ってもらうようにしています。
私がなぜこのような問いかけをするかというと、子どもたちに「相手が考えている時間も自分の時間」と考えてほしいからです。相手が考えている時に、相手が何を指してくるかな?と読みの練習をする時間は、仮にその手が外れていたとしても、決してムダにはなりません。
ただ、初心者の子どもたちには、読む材料が少ないので、指した後、よそ見をしたりキョロキョロしたりと、暇な時間になってしまうのはある程度しかたありません。でも、だんだんと強くなることで、読むことはたくさんでてきます。少しずつでも、子どもたちが、将棋における待つ時間を「相手を待つ時間」ではなく「自分が考える時間」と認識できるようになればそれは子どもたちの棋力が上がった証拠です(^ ^)。
ちなみに、いつつの将棋教室では「相手の時間も自分の時間」と子どもたちに言い聞かせています。
大人も待つことが大切
実際に上記なような工夫を凝らしたことで、今まで待てなかった子どもたちがすぐに待つことができる・・、ということはなく、指導側としても何度も何度も伝えてわかってもらうのを「待つ」ことが大事ですね。
「負けは気にしなくていい」ことや「対局中の態度」など教えてもすぐに直らないことが多いです。こちらもすぐに結果はでませんが、根気強く子どもたちを信じて伝えてあげていくと、ある日ふっとできなかったことができていることがあります。そんな子どもたちの成長の瞬間に立ち会えると、講師冥利につきるというか、本当に嬉しくなる瞬間です。
指導する側も、「待つ」というのは大事なことなんだと実感しています。
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