将棋を学ぶ 2017年9月4日
3手先を読めるようになるために
この記事では、「3手先を読む」ことがなぜ難しいのか、3手先を読めるようになるにはどのような練習をすればいいのかについてご紹介します。
少し前に、いつつのテキスト「はじめての将棋手引帖」を購入してくださった方からこんな質問をいただきました。
娘が将棋に興味を持ち始めたのがきっかけで、手引帖を購入し、毎日楽しく取り組んでいます。少し前から将棋の1手詰めの勉強を始め、正解率も高くなったので、最近3手詰めに進んでみたのですが、よく分かりません。三手詰めの解き方のコツを教えてください。
まず、3手詰めの問題を解くには、3手先を読まなくてはいけません。「3手先を読む」とは、自分→相手→自分と指した時の盤面をイメージすることなのですが、実はこれが意外に難しいのです。
「3手先を読む」のハードル
それでは、なぜ「3手先を読む」ことがそんなに難しいのでしょうか?その答えは、相手の動きも読まなくてはいけないからです。
例えば、今回のご相談では、「1手詰はできるのに、3手詰になった瞬間分かりにくくなった」とのことでしたが、1手先の読み方が「飛車を前にすすめたいから飛車をすすめる」とか「王手をかけたいから王手の手をさす」、「駒を取りたいから駒をとる」といった感じだったのに対し、3手先になると、「駒をタダでとりたいけど、相手の駒が守っているな。そしたらその相手の駒をずらすために、この駒を使ってみよう」「両取りをかけたいから、相手の駒をここまで移動させよう」「飛車角を成りたいけど、相手の駒が守っているから、自分の駒の利きを足すために、そうだ銀をつれてこよう」と言った具合になります。
つまり、1手の読みでは「自分がどう指したいか」だけを考えていればよかったのですが、3手の読みになると「自分がどう指したいか」に加えて、「自分の指したい手を指すために、相手の駒にどのように動いてほしいのか」について考えなくてはならなくなり、読みが急に複雑になるわけです。
3手先を読むために
それでは、3手先を読めるようになるには、どのような練習をすればいいのでしょうか?
3手詰の詰将棋
3手先の読みができるようになるためには、やはり3手詰の詰将棋をたくさん解くことが有効です。なぜなら、詰将棋には読みの力を磨く上で効果的な要素がたくさん詰まっているからです。
例えば、詰将棋は原則ひとりで先手と後手を引き受けます。そのため、3手詰めのハードルである相手の指し手について考える訓練ができます。また、目的と答えが1つというのも詰将棋のいいところです。詰将棋の目的といえば、もちろん玉を詰ますことなのですが、いざ指そうとした時に「玉を詰むためにはどう指すべきか」と思考の焦点を絞ることができ、その思考がちゃんと正しかったのかどうかの答えあわせをすることもできます。
もしこれが実戦の流れの中だとすると、そもそも81マスある盤面のどこに注目して、何を狙って3手の読みを発動すればいいのか焦点が定まらず、かつ、仮に何かを狙って指したとしても、必ずしも相手が自分の狙い通りに駒を動かすわけではないので、正しく3手先が読めていたのかどうか確かめることができません。同じ「3手先を読む」でもまた一つ難易度が上がってしまうわけです。
今回のご相談では、3手詰の詰将棋に苦戦中ということでしたが、最初のうちは分からなくても問題ありません(^^)
大切なのは、考えて分からなかった時に、答えを見てちゃんと納得することです。最初のうちは、実際に将棋の盤駒を出して並べるといいと思いますが、繰り返し練習することでなるべく、頭の中でイメージできるようにしていきましょう。ちなみに、いつつのカードde詰将棋はフラッシュカードのような感覚で詰将棋の問題を説きすすめて行くことができます。詰将棋の反復練習にはおすすめですので、ぜひ1度試してみてください。
手筋を覚えよう
先ほど、対局の中で3手先を読むのは3手先の詰将棋を解くよりさらに難しいという話をしましたが、とはいえ、棋力を上げるためには対局の中でも3手先を読む必要があります。
1局の中で3手先の読みが出てくるのは、基本的に駒と駒がぶつかり合う中盤以降です。(序盤では囲いをつくったり敵陣を攻めるための準備をしましたね(^^))。そして、中盤での戦いを上手く進めていく上で必要になるのが手筋です。
将棋でいう手筋とは、駒を上手に使うためのテクニックです。例えば、四段目に歩を打って、次の手番でと金に成ることを狙う垂れ歩、や相手と駒を交換することで、より価値の高い駒を手に入れること狙った駒得など、手筋といわれるものの中には、3手(それ以上)先の読みを含んだものがたくさんあります。
前述で、実戦の中で3手先の読みをするとなると焦点がぼやけてしまうという話をしましたが、手筋をたくさん覚えることで、「玉を詰ます」以外にも「敵陣を突破するには」「自分の駒を成るには」「数の攻めをするには」など、3手先の読みを発動するための糸口を得ることができます。
もちろん手筋も詰将棋と同様で、初めのうちは、なかなか上手く行かないと思うのですが、実戦を繰り返す中で色んな手筋を試しているうちに、「ここはこうすれば上手くいくな」という感覚が身についてくると思います。また、中盤戦について学習するはじめての将棋手引帖4巻でも、手筋を踏まえながら三手作の局面を考える問題が収録されているのですが、それが解けるようになれば3手先の読みができるようになってきた証ということができます。
また、少し話が逸れますが、手筋を覚えることは、持ち駒を上手く使うことにも繋がります。
最善の手が3手読めれば負けない
3という数字だけ見ると、「3手先を読むなんて簡単じゃないか!」そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、将棋界には昔から、「最善の手が3手読めればよい」という言葉があり、これは、最善の3手(まずは自分の候補手で、局面の最善一手。そして、相手の応手も最善の一手。そこで自分も最善の一手。)を読めれば良し!ということです。将棋は良い手もあれば悪い手もあります。ミスもします。指さないほうが良かったなんていう手も存在し、できるならそんな手は避けたいところですね。そんな中、1手目に「最善の一手」を指すことができ、相手の応手も最善の手を読み、そして3手目も最善手を見つけ出すことができれば、まぁ負けないとしたものです、というわけです。実際は、その最善の一手を見つけるまでに、水面下でまた何手も読むのですが・・。
将棋をはじめてまもない初心者の子どもたちのつまづきの中には、今回のご相談と同じように、3手の読みになった瞬間「将棋難しい( ;´Д`)」と感じる子も、きっとたくさんいると思います。しかし、将棋における「読み」の力を磨けば、将棋がもっともっと将棋らしく、そしてもっともっと楽しくなることは間違いありません。今はちょっとだけしんどいかもしれませんが、初心者から初級、そして中級に差し掛かる頃には、3手先の読みも自然と出来てくるようになるので、ぜひめげずにチャレンジしてみてください( ´ ▽ ` )ノ
将棋のほん
はじめての将棋手引帖4巻
1,650円(税込)
商品番号:135951839
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