将棋を学ぶ 2018年8月3日
将棋初心者の子どもたちのつまずきポイント④ 二歩
なぜ初心者の子どもたちは二歩をするのか
将棋用語で指してはいけないルールのことを「禁じ手」と呼びます。禁じ手で一番多くできるのがこの「二歩」ですね。将棋初心者の子どもたちどうしの対局で、1番といっても過言ではないくらいよく出てきます。「同じ筋に自分の歩を2枚おいてはいけない」というとっても分かりやすいルールなのですが、なぜこうも将棋初心者の子どもたちは二歩を頻発してしまうのでしょうか?
先日のいつつ将棋教室のレッスンでも、初心者クラスの5歳の女の子が下の問題に苦戦していました。
「(相手の駒も含めて)二歩になっている歩に、○をつけよう」という問題だったのですが、5筋の二歩を見落としていました。こうした事例からも分かるように、将棋初心者の子どもたちは、二歩の中でも、間に別の駒が挟まってしまうと、気がつきにくいようなのです。
持ち駒の歩を使うときは特に要注意
先ほどは、本当に将棋をはじめたばかりのお子さんのつまずきでしたが、子どもたちが本将棋を本格的に指すようになると、今度は歩を使う際に「二歩」をしてしまうことが多くなります。歩は数が多いので、取ったり交換したりして駒台にたくさん並びます。それゆえ歩を使う事が多く「二歩」が起こりやすいのです。また底歩(1番下の段に歩を打つ)や垂れ歩(成ることを狙って四段目に歩を打つ)、合わせの歩(相手の歩に自分の歩をぶつけるように打つ)など歩を使う手筋もたくさんあるので、二歩という禁じ手がおこりやすいと言えます。
先日の将棋教室のレッスンで、「垂れ歩」についての講義をしました。その後、生徒どうしの実戦の時間。「垂れ歩ができた局面があったら先生に教えてね〜」と声をかけていました。しばらくして、男の子が「できたよ〜!!」と元気よく呼んでくれました。どれどれっと盤面を確認してみると、「あ、二歩だった!」ガクッ、ということが何度かありました。改めて二歩の多さを実感。お互いに「二歩」に気がつかないまま対局が進行して終わる、というケースもあると思います。
では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
それはきっと将棋盤が子どもの視野よりも広いからだと思います。特に将棋初心者の子どもたちは、「どうやって相手の陣地に入ろうか。成れる駒はないか。」と前のめりで考えてしまいます。相手の陣地または実際に駒が動いてドンパチしている箇所に目が行きます。それはそれで大事なのですが、その結果として、相手の陣地で「歩を使ういい手があった!」→嬉しくてすぐに歩を打つ、 ということが起こるのだと思います。将棋初心者の子どもたちにとって、一呼吸おいて「自陣をみる」ということはなかなか難しいのです。
将棋は、相手の陣地やドンパチ戦いが起きている部分を見る他にもう一つ、「盤面全体を俯瞰してみるような視点」が必要になってきます。これがないと遠見の角のような遠くから利いている駒に気がつくことができなくなります。また、これはちょっとレベルが高くなりますが、この部分は駒損だけど、玉の固さは自分の方が固いぞ、というような全体のバランスを考える思考も大事になってくるので盤全体を俯瞰してみるような視点は必ず必要になってきます。話は少しそれましたが、要するに、初心者の子どもは、盤面全体をみる、ということがなかなかできないのです。
今回のつまずき具体例
二歩を打ってしまう
写真の図面は、先日将棋教室のレッスンで実際に登場した二歩です。☗7二歩と打った局面。部分図でみるとなかなか良い手です。相手の香を狙いつつ、もし歩を取られたら、8一の龍で相手玉を取ることができます。そう、「二歩」には、良い手が多いものなんですよね。私もこの局面をみたときに思わず「これは良い二歩だね!」と褒めてしまいました。教室では13級の子ですが、こういう手も指せるようになったのは上達の一歩です。でも、、、、視線を下にもっていくと、そう「7六」のマスにに自分の歩がいるんですよね。
二歩をしないために
単純な解決策になってしまいますが、将棋初心者の子どもたちが二歩を指さないようになるには、指す前にしっかり確認するという習慣を身につけるしかありません。ですので、私が将棋初心者の子どもたちを指導するときには、「歩を打つ時は二歩確認!」と伝えるようにしています。また、「垂れ歩」をはじめとした歩の手筋を練習するときは、子どもたちどうしの対局の中でその手筋を使ったらいつも声をかけてもらうようにしています。目的はもちろん手筋がちゃんとできているかを確認するためなのですが、同時に二歩をしていないかのチェックもできます。
あとは、解決策と言えないかもしれませんが、「二歩」を指してしまった経験を増やすことです。先ほどの対局で「二歩」を指摘された子は、「あ〜!!」と驚いていました。やっちゃったという顔でしたが、そうした経験で「次は気をつけよう。」と思えるものです。初心者の子が二歩を指した場合、見逃しありで対局を続行してもらうことも多いですが、ある程度将棋が指せる子同士で二歩が起こった場合、即負けにするか、または相手に聞く場合もあります。相手にとっては、「もう少しこの後の対局を指したい。」ということが時々あるからです。このように、教室等での先生との対局や生徒同士の対局では指したその場で指摘してもらうことで、自分がどんな時に二歩をしやすいのか体感することも大事な経験です。次の対局以降どのような場面で気をつけるといいのか学習することができますよね。
また、「歩を打つ時は二歩確認!」は自分だけでなく対局相手に対しても行う必要があります。というのも、教室では二歩に柔軟に対応できますが、大会のときにもし相手が二歩を打ってきたら「二歩ですね。」と指摘できないといけません。将棋には審判がいませんので、相手が二歩を指したら自分が気がついて指摘する必要があります。面と向かって指摘しにくい時は、大会の係の人を呼ぶという対応もありますが、要するに自分が気がつかないといけないわけです。
自分が二歩を指さないことにプラスして相手の二歩も見逃さないようにできるといいですね。
大会のマナーとして「二歩をしてしまったら、すぐに投了する。」のは大事なことです。そこは潔くみとめることも忘れずに・・。
つまずきポイントシリーズ
いつつブログでは、他にも将棋初心者の子どもたちのつまずきポイントとその克服法について紹介しています。
将棋初心者の子どもたちのつまずきポイント③ 相手の駒の利きが見えない
二歩をしない練習には
今回の記事で、将棋初心者の女の子が二歩を見つける問題を解いていたのはこちらのテキストです( ´∀`)
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