株式会社いつつ

連載:東京新聞「子育て日記」 2017年6月15日

諦めない!成長したね。

中倉 彰子

前回、シン(6つ)が「子ども大会に出る!」と宣言してからの続き。その後、小学生名人戦の多摩地区予選に申し込みをしました。大会に参加するとなると、私もちょっとやる気になり、シンとも将棋を指す回数が増えました。シンも将棋アプリ等で指し、毎日一喜一憂しています。

負けても最後まで頑張る姿に子どもの成長を実感。
負けても最後まで頑張る姿に子どもの成長を実感。

さて、迎えた当日。会場前でシンの前を通り過ぎるお兄ちゃん達。「あーなんか強そう、どうしよう。勝てるかなぁ。」見る人すべてが強そうに見えるようで、不安がるシン。ちょっと微笑ましい(笑)。

大会は、名人クラスと、交流戦A、Bに分かれ、シンは級位者の集まるAに参加。入賞者には賞品が出ますが、中でもシンはトロフィーが気になっているようです。参加者が奇数だったため、1局目はシンが待つことに。相手のいない席に不安そうにポツンと座るシン。その後、ウッカリ私が隣の名人クラスの観戦に行ってしまい、しばらくして戻ってみると、シンが目に涙を溜めています。「ママ、なんでどっかいっちゃたの!」まずい。対局前に精神を乱してしまった(笑)。

会場には審判長の中村太地六段と、増田康宏新人王の姿が。プロ棋士の来場に、みんな「わ〜」という憧れの視線。プロの存在って、子ども達に夢を与えるんだなーと思いました。シンの1回戦の相手は、5年生の男の子。扇子を手に持ち、いかにも強そうです。遠目には、シンが相手陣地に手を伸ばしているので「お、攻めているのかな?」なんて思いましたが、その後あっさり負け。3連敗したところで、もうイヤになっていないかと心配になり「もう帰る?」と聞くと「ダメだよ。5回やるよ。」そして、トロフィーや賞品が並ぶ机の所に行って「まだあと2回勝てば、これもらえる?」と聞いてきます。(もうトロフィーはもらえないけど・・)「頑張ったらママ賞がもらえるよ。」と、その場を凌ぎました。

お昼休みに食事をとって早めに会場に戻ると、子ども達が練習将棋を指しています。一人のお兄ちゃんにシンとの対戦を頼んでみると「いいですよ。」と言って指してくれました。シンも嬉しそう。終わったらもう一局、という感じで、4局くらい指してもらったでしょうか。シンはそのお兄ちゃんから「じゃあ。がんばってね」と応援され午後の対局に向かいました。しかし、善戦空しくその後も連敗。最後の対局を終えると、早く会場から出たがるシン。

「くやしかったね。」と言うと「くやしいに決まってるじゃん!」と私に当たってきます。約束していたママ賞のご褒美をコンビニで買ってあげて、その後、パパに報告の電話。

パパ「シン。勝ち負けなんて気にしなくていいんだぞ。よく諦めないで5回指したよ。偉かったな。」シンの目から涙がポロポロこぼれました。私もうるっ。

子どもの切り替えは早いもので、その後すぐに、買ってもらったオモチャの箱を開けてニッコリ。「ママ、早く家に帰って24(ネット将棋)しよう!」の言葉に、負けて将棋をイヤにならなくて良かったとホッとしました。家に帰るとお姉ちゃん達に「こんな風にシンが指したら、相手はこんな風にきたんだよー。」と解説していました。甘えん坊のシンの、ちょっと成長した姿が嬉しかったです。

この記事は、東京新聞にて中倉彰子が連載している「子育て日記」と同じ内容のものを掲載しております。
:『東京新聞』2016年12月16日 朝刊

いつつでは、他にも子どもの将棋大会に関する記事があります

将棋大会に参加したいというお子さんには、二文字駒での練習をオススメします(^ ^)

この記事の執筆者中倉 彰子

中倉彰子 女流棋士。 6歳の頃に父に将棋を教わり始める。女流アマ名人戦連覇後、堀口弘治七段門下へ入門。高校3年生で女流棋士としてプロデビュー。2年後妹の中倉宏美も女流棋士になり初の姉妹女流棋士となる。NHK杯将棋トーナメントなど、テレビ番組の司会や聞き手、イベントなどでも活躍。私生活では3児の母親でもあり、東京新聞中日新聞にて「子育て日記」リレーエッセイを2018年まで執筆。2015年10月株式会社いつつを設立。子ども将棋教室のプロデュース・親子向け将棋イベントの開催、各地で講演活動など幅広く活動する。将棋入門ドリル「はじめての将棋手引帖5巻シリーズ」を制作。将棋の絵本「しょうぎのくにのだいぼうけん(講談社)」や「脳がぐんぐん成長する将棋パズル(総合法令出版)」「はじめての将棋ナビ(講談社)」(2019年5月発売予定)を出版。

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