将棋を学ぶ 2024年11月19日
将棋の囲い「矢倉」に囲ってみよう!~守りを固めつつ攻めの機会を探る楽しさ~
囲いシリーズから「矢倉囲い」をご紹介します。城郭の櫓に形が似ていることが名前の由来と言われています。
特徴
名前 | 矢倉 |
読み | やぐら |
場所 | 左側 |
長所 | 上からの攻めに強い 金銀が密着していて頑丈 |
短所 | 作るのに手数がかかる 横からの攻めにやや弱い |
矢倉は居飛車と組み合わせて使います。相手も居飛車でお互い居飛車の「相居飛車」の時に囲います。
相手が振り飛車のときは、相性が悪いので使わないようにしましょう。
居飛車党の基本となる囲いなので必ず覚えておきたい囲いです。
囲い
矢倉まで組む手順
初手からの一例です。
☗7六歩→☗6六歩→☗6八銀→☗7七銀→☗7八金→☗5八金→☗5六歩→☗6七金右→☗6九玉→☗7九角→☗6八角→☗7九玉→☗8八玉
YouTube動画解説でも手順をご確認いただけます。
ポイント
矢倉囲いは、金銀の形を整えてから玉を移動するのが基本です。この時に押さえておきたいポイントがいくつかあります。
☗6九の位置まで玉を動かしたら、まず一旦ストップ。ここで角を「お外に出す」必要があります。
子どもたちに説明する際は、「まずは角さんをお外に出てもらって、それから玉が入るよ」と伝えます。すると、「お外に出て入る!」という表現が少し面白いようで、子どもたちにも印象に残るようです。その後、子どもたちは「えっと、角をお外に出して…」と考えながら、手順を一生懸命覚えています。
子どもは手順の丸暗記が得意な場合もありますが、こうした意味づけをすることで、記憶がより定着しやすくなるようです。そのため、こうした工夫を取り入れています。
今回の手順例は、矢倉の囲いを一気に作るものでしたが、実際には右側の飛車がいる方の駒も動かしながら進めます。
例えは、1筋の歩を伸ばす「すずめ刺し」
香と飛車を二段ロケットのように置き、あとは桂も使って、一気に1三のマスを目指して攻めていきます。うまくいけば破壊力抜群です。
他には、森下システムという方法
4八の銀は、4六歩〜4七銀としたり、5七~4六、5七~6六など展開によって変えていきます。
実戦では、矢倉の囲いを組みながら、飛車側の駒を進めていくことが大事です。
矢倉Q&A
矢倉についての質問にお答えします。
Q:将棋の本で☗7六歩☖8四歩☗6八銀という出だしで始まる手順を読みました。いつつの『はじめての将棋手引帖3巻』では2手目は☗6六歩となっていますが、2手目は☗6八銀と☗6六歩どちらが良いのですか?
A:するどい質問ですね。確かに矢倉の本やプロの対局では、☗7六歩☖8四歩☗6八銀という出だして矢倉になることが多いです。ただ初心者が矢倉をするときに、下記のようなことが時々起こります。
相手が☖8四歩でしたら☗6八銀で問題ないのですが、相手が☖3四歩の時に、☗6八銀と指すと、☖8 八角成で角を取られてしまいます。こういったリスクがあるので、『はじめての将棋手引帖3巻』では☗7六歩~☗ 6六歩から矢倉に囲う手順で進めています。
Q:相手が振り飛車でも矢倉にしたいのですがダメですか?
A:ダメではないですが、矢倉は囲いに時間がかかってしまうため、あまり得策とは言えません。
図が参考例ですが、
振り飛車側が美濃囲いの固めなのに対して、矢倉側はというと、金銀の骨格ができたばかり。この後、角を出して、玉を8八に移動させる手順が残っています。この間に、振り飛車の飛車側の銀が前に出てきて攻められてしまう可能性があります。
矢倉の弱点
横からの攻めに注意
二段目に飛車がいて、矢倉囲いの金を狙われると崩されてしまうことがあります。
二段目に飛車や龍を置かれてしまい・・
3二の金を狙って銀を使います。
これは以下
☖4二金寄 ☗6一角
☖5三金 ☗4 三歩
にて、矢倉を崩していきます。
縦から崩す
少し難しいのですが、縦から崩しにいくこの手順もあります。これは有名な手筋で、私も子どもの頃に知った時はとても驚きました。
通常、相手の歩の前に駒を置くとタダで取られてしまうので、あまり指されない手ですが、この手には特別な意味があります。
例えば、☖2四同歩と相手が応じても、その後☗同歩と取り返す形になり、これが相手にとって嫌な形になるのです。桂馬を取られる損失よりも、この地点に拠点ができることの方が価値が大きいのです。
玉のすぐ上の位置、いわゆる「玉頭(ぎょくとう)」にある歩を剥がされると、一気に玉が危険になります。
さらに、先ほどの手順から進んで、☗2四桂に対して☖4二金と逃げた場合には、☗4三角成と攻め、☖同金の後に☗3二金と打ち込むことで、なんと詰んでしまうのです!
このように、2四の桂馬は相手にとって「取っても嫌だし、逃げても嫌だ」と感じさせる、絶妙な手とな矢倉の弱点となっています。
矢倉いろいろ編
銀矢倉
☗6七の金が銀になっている形です。
矢倉穴熊へ
矢倉囲いをもっと固くする囲い。
端の香を一つ上に動かし、そこに玉を入れて穴熊に組む方法もあります。
まとめ
矢倉囲いは、将棋の基本的な戦法の一つで、歴史的にも多くの棋士に研究され発展してきた囲いの一つです。一昔前はプロ棋士のタイトル戦でもっともよくでてきた囲いです。
堅実で安定感があり、攻めと守りのバランスが取れているため、序盤から終盤まで安定した戦いができる点が魅力です。
初心者から上級者まで幅広く使われるこの囲いは、守りを固めつつ攻めの機会を探る楽しさがあり、将棋の基本を学ぶためにもっとも最適な戦法といえます。
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